国が推進している中学校の部活動の地域移行について、大規模な自治体ほど地域移行をすでに進めている傾向にあることが1月23日、日本部活動学会前会長で学習院大学人文科学研究所客員所員の長沼豊氏らの共同研究チームの調査で明らかになった。中学校の数が多い自治体の方が、部活動の地域移行について生徒や保護者、教職員に意向調査を行っており、自治体の規模によって部活動の地域移行の進捗(しんちょく)に差が出ていることが伺える。
共同研究チームは日本学術振興会による科学研究費の助成を受け、昨年1月20日~2月16日に、都道府県・市区町村教育委員会などに質問紙を送付。市区町村教委の39.8%、都道府県教委の29.8%から回答を得た。
昨年4月に単純集計の結果を公表し、市区町村教委の29.1%で、すでに地域移行を進めている学校があることが分かっている。今回、さらにクロス集計などの詳細な分析を行った。
自治体の規模による違いを検討するため、市区町村を中学校の数(「0~1校」「2~9校」「10~128校」)で分け、部活動の地域移行をすでに進めている学校がある市区町村との関係を比較したところ、中学校数が多い市区町村ほど、すでに地域移行を進めている学校の割合が有意に高かった(=グラフ)。
生徒や保護者、教職員に部活動の地域移行に関する意向調査を行った市区町村の割合も、中学校数が多い市区町村の方が実施率が高い。
部活動の地域移行に関して、国や都道府県からの補助を受けている市区町村の割合は全体で63.1%だったが、市区町村の中学校数別で見ると、「10~128校」は76.9%、「2~9校」は66.7%なのに対し、「0~1校」は45.1%にとどまり、半数を下回った。
また、国や都道府県からの補助を受けている市区町村の方が、受け皿となる地域クラブの指導者に事前研修や定期的な研修を行っている割合が高かった。
この結果について長沼氏は「部活動の地域展開を進めるために、地域クラブの指導者の確保とその質の担保は重要で、指導者への事前研修や定期的な研修の実施は不可欠と言える。今回の調査結果から、補助を受けている市区町村の方が研修実施の割合が高いことが分かった。国や都道府県による今後の予算的措置が期待される」と指摘している。
【キーワード】
部活動の地域移行 これまで学校が担ってきた部活動を、地域のクラブや団体を中心としたものにしていく改革。2023年度以降、中学校の休日の部活動を地域に移すことが進められているが、国の有識者会議で、31年度までに平日も含めて地域移行する方針が示され、名称も「地域展開」とすることが提案されている。