高校無償化3党協議 実務負担を考慮し一部4月以降に先送り

高校無償化3党協議 実務負担を考慮し一部4月以降に先送り
高校無償化について議論が交わされた3党協議=撮影:山田博史
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 教育無償化に向けた自民、公明、日本維新の会の3党による実務者協議が1月27日、国会内で開かれた。会合では、当初、今年4月からの高校の授業料無償化を求めていた維新から、実務負担のかかる部分は4月以降の協議に先送りすることも認めるとの提案があり、今年4月とそれ以降の2段階実施に向けて協議を続け、2月中旬までに一定の方向性を示すことになった。高校の授業料無償化は、同日の衆議院の代表質問でも取り上げられた。

維新「制度設計をする時間や準備も必要」

 3党は昨年12月から教育無償化を巡って実務的に協議する「無償化を含む多様で質の高い教育のあり方に関する検討チーム」を設置して議論を進めており、維新は当初、所得制限を撤廃した高校の授業料無償化を今年4月から実施したいと提案していた。

 前回の会合で、与党側から高校に行かない世帯との公平性や4月実施に伴う実務の混乱などの論点が示されたのに対し、維新の金子道仁参院議員は27日の会合で、実務負担のかかる部分は今年4月開始にこだわらず引き続き協議することを提案したという。これを踏まえて3党は、2段階での実施を視野に入れて協議を続け、2月中旬までに一定の方向性を示すことで一致した。

 会合後に取材に応じた金子議員は、「4月から無理か、無理じゃないかという乱暴なくくりでなく、エレメンツ(要素)ごとにしっかり考えるべきではないかと思う。教育無償化と質の担保の両方を実現するためには制度設計をする時間や準備も必要であり、丁寧に細分化する必要があるのではないかと提案した」と述べた。

 また、柴山昌彦衆院議員(自民)は「(維新側から)実務に負担のかかる部分は今年4月からでなく、引き続き協議という提案をいただいたことは前向きに評価したい」と述べたうえで、高校無償化に必要とされる約6000億円の財源については、「内訳の詳細な議論はまだだが、(無償化を)段階的に実現するということであれば、単年度で全額必要とはならないと思っている」と述べ、今後の協議の中で詰めていくべき課題との認識を示した。

石破首相「各党の主張を拝聴し議論重ねる」

衆議院本会議で答弁する石破首相(衆議院インターネット中継より)
衆議院本会議で答弁する石破首相(衆議院インターネット中継より)

 高校無償化を巡っては、衆議院の代表質問でも取り上げられ、石破首相は「地方自治体独自の取り組みや安定財源の確保などの論点を踏まえ、各党の主張も十分に拝聴し、議論を重ねていく」と答弁した。

 立憲民主党の野田佳彦代表は「東京都で高校授業料無償化がスタートし、所得制限も撤廃された。東京都方式の私立を含む高校授業料無償化をどのように評価するか。全国展開する考えはないか」と質問した。

 これに対し石破首相は「高校進学率が99%に達する現状で、どこまで家計の負担軽減を図るべきか、子ども子育て加速化プランで児童手当の抜本的拡充や高等教育の負担軽減を進めているところで、家計を支えるさまざまな施策を総合的に考える必要がある。さらに教育の質の向上や基盤としての国の制度、地方自治体が独自に実施する支援とのバランス、安定的な財源の確保といった論点も考える必要がある。各党の主張も十分に拝聴し、今後、議論を重ねたい」と答弁した。

 日本維新の会の前原誠司共同代表は、冒頭の約10分を教育政策の質問に充てた。高校の授業料無償化について、「私立高校への進学が35%。年間学費は100万円を超え、子育て世帯の経済的負担となっている。大阪府、東京都は私立高校を含めた無償化に取り組んでいる。本来であれば国全体で進め、全国一律で教育水準を引き上げ、教育・子育ての負担軽減を実現すべきだ」と迫った。

 これに対して石破首相は「所得による格差や地域の実情を踏まえた支援も必要と考えるが、全ての子どもに必要な教育、子育て支援を行うための制度のあり方についても真摯(しんし)に議論をしたい。自民、公明、維新の会の間で実務者による協議を行っていると承知しており、そのような論点も含め、政党間で協議が進められると考えている」と答えるにとどまった。

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