テレワークでもチームワーク 肢体不自由の生徒が就労体験

テレワークでもチームワーク 肢体不自由の生徒が就労体験
名簿作成の仕事に挑戦する都立花畑学園高等部の生徒=撮影:藤井孝良
【協賛企画】
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 重度の身体障害のある生徒に多様な働き方があることを知ってもらおうと、東京都肢体不自由特別支援学校進路指導連絡協議会はこのほど、複数の都立特別支援学校をオンラインでつないで、テレワークの仕事を体験する授業を行った。授業には、重度身体障害者が在宅で就労しているスタッフサービス・クラウドワークが協力。チームで働くことの大切さを学んでいた。

 都内にある肢体不自由特別支援学校などで構成される同協議会では、重度身体障害のある生徒を対象にして年に数回、さまざまな就業体験の機会を設けている。在宅就労に関する調査・研究事業にも取り組んでおり、今回の授業はその一環で実施。1月20日と24日に、午前と午後に分けて実施され、2日間で11校の生徒が参加した。

 授業では、スタッフサービス・クラウドワークの社員と複数の特別支援学校をオンラインでつなぎ、表計算ソフトウエアを使って、同社が手掛けている業務の一つである名簿作成を疑似体験。社員との質疑応答では「勉強がやりづらい時は、どうモチベーションを上げていましたか」「仕事でミスをした時はどうすればいいですか」「車イスで外出する人は身近にいますか」などの質問が飛び交い、社会人としての仕事や生活のイメージを膨らませていた。

 同社には、重度身体障害があり、在宅就労する社員が約600人おり、コンピューターを使ったデータ入力などの業務を担っている。本人の通院や介助などに合わせて働けるようにシフト制にしているほか、テレワークでの孤独感を解消するためにチームで業務を行い、1日3回のオンラインミーティングでは、進捗(しんちょく)状況や体調の報告だけでなく、必ずメンバー同士の雑談の時間を設けるようにして、心理的安全性を高めているという。

 特別支援学校などへの就労体験にも力を入れており、授業では、分からない時は質問したり、作業が終われば必ず報告したりするなどのコミュニケーションをしっかり取りながら、信頼関係を築いていく大切さを強調していた。

 都立花畑特別支援学校高等部1年生の吉岡琉翔(りゅうと)さんは「大人になってからも役立つと思って参加を希望した。作業に慣れるまでに時間がかかったけれど、ゆっくり練習していきたい。将来はパソコンでスライドの資料をつくるような仕事に就きたいが、在宅で働く方が自分にとってはいいと思う」と、在宅就労の良さを実感。同じく1年生の下坪晴真さんは「1人で作業する仕事が向いていると思っていたが、いろんな人と一緒に仕事をするのは楽しいと感じた。会話をすることは大切だ」と、コミュニケーションの重要性に気付いていた。

 同校で進路指導主任を務める森田健太郎教諭は「肢体不自由の人の就労を考える上で、通勤は大きなネックだ。多様な働き方を知ることで、選択肢や可能性が広がれば」と話す。

 

【キーワード】

キャリア教育 人が生涯を通じてさまざまな役割を果たす中で、自らの役割の価値などを見いだし、積み重ねていくキャリア発達を促す教育。社会的・職業的な自立に向けて必要となる能力や態度を育てることを重視しており、扱われるテーマは就職や進学だけではない。

心理的安全性 組織において自分の意見や気持ちなどを安心して言い合える状態。働きやすい職場づくりに向けた考え方としてだけでなく、学級経営の観点などからも近年注目されている。

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