参議院で1月28日、石破茂首相の施政方針演説に対する各党の代表質問が行われ、石破首相は「新年度予算案には教師を取り巻く環境整備のため、学校における働き方改革の推進や教職員などの処遇改善の施策も盛り込んだ。これらの施策を効果的に活用することが大切」と教職員の処遇改善を進める姿勢を示した。一方で、50年ぶりに教職調整額引き上げの改正案が提出される「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(給特法)については「幅広い観点から諸課題を整理する」と述べるにとどまり、給与制度の抜本的な見直しについては言及しなかった。
政府は給特法について、残業代に代わって基本給の4%を上乗せ支給している教職調整額を段階的に引き上げ、教員の残業時間縮減を進めるとする改正案を今国会に提出する。この日、参議院本会議で代表質問に立った立憲民主党・水岡俊一参院議員会長は「教師に超過勤務をさせる状態が続き、給特法がその根本的な原因」として、給与制度の見直しを迫った。
水岡氏は「文部科学省調査で2023年度の中学校教員の月平均残業時間は45時間超えが42.5%、過労死ラインの80時間超えは8.1%だった」といったデータを挙げた。
その上で、「『定額働かせ放題』を招く給特法が根本的な原因。給特法は災害時など特別な場合を除いて時間外勤務を命令できないとする法律だが、過労死ラインをも超える超過勤務をさせる状態が半世紀続いている。19年には当時の文科相が給特法は労働基準法ともずれがあるとして根本的に見直す旨の答弁をしている。給特法改正案提出に際し、この約束通り、法制度的に根本から見直すべきだと考えるが、いかがか」と迫った。
これに対して石破首相は「給特法にはさまざまな議論がある。教職調整額の率を引き上げるための法改正を提出するとともに、時間外在校等時間が月20時間程度に達するまでに幅広い観点から諸課題の整理を行うこととしている」と答えるにとどめた。
教師不足についても、水岡氏は「昨年も新学期当初に担任不在の学級があることが報じられた。この厳しい状況を改善しようとするのであれば、学校現場に負担をかけない方法で全国的に調査を行うべきだ」とただし、石破首相は「21年度に各学校の実数調査を行い、22年度以降は学校現場の負担を考慮し、教育委員会へのアンケートで調査している。引き続き適切な把握に努める」と応じた。
このほか、水岡氏は大分県玖珠町の学びの多様化学校、町立くす若草小中学校を取り上げ、朝の苦手な子どもに合わせて登校時間を午前9時半とし、「対話」「野遊び」「探究」という3つのユニークな教科を新設した事例を紹介。「日本の学校制度や学力とは何かという教育論そのものが根本的に問われる時代に入った。学びの多様化学校にみられる子どもが安心して自分らしく学べる学校が必要だ」と訴え、石破首相は「学校は必ずしも画一的である必要はないと考える。柔軟な教育課程の編成が可能な多様な学校の確保に努めたい」との認識を示した。