「知の総和」冠し高等教育の未来像示す 中教審で答申案

「知の総和」冠し高等教育の未来像示す 中教審で答申案
高等教育の在り方を示す答申案を巡り意見が交わされた中教審の合同会議(オンラインで取材)
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 中教審大学分科会(分科会長・永田恭介筑波大学長)と「高等教育の在り方に関する特別部会」の合同会議が1月28日、オンラインで開かれ、将来社会を見据えた高等教育の目指すべき姿などをまとめた答申案が示された。タイトルは少子化を前面に出していた当初案から「我が国の『知の総和』向上の未来像~高等教育システムの再構築~」に改められ、「質」「規模」「アクセス」の3つを柱として具体的な方策が盛り込まれた。答申案はおおむね了承され、文言修正を経て今年度内に中教審総会に示される見通し。

 将来社会を見据えた高等教育の在り方を巡る当初の答申案は昨年12月に中教審総会に示された後、パブリックコメントが行われた。28日の合同会議では、パブコメで寄せられた意見や中教審総会の意見を踏まえて修正・追記された答申案が改めて示された。

 答申案では、急速な少子化など国内外の諸情勢が急激に変化し、2040年には大学進学者が21年と比べておよそ27%減って46万人になることを見据え、持続可能な活力ある社会を実現するためには「知の総和」の向上が必須だと強調している。

 その上で「質の高度化」「規模の適正化」「アクセス確保」の3つを柱に具体的な方策が示されている。「質の高度化」では、厳格な成績評価や卒業認定の実施など「出口における質保証」の促進などが示された。「規模の適正化」では、大学間の連携推進や厳格な設置認可審査への転換に加え、縮小・撤退への支援策が示された。「アクセスの確保」では、地域で大学や自治体、産業界などが議論する協議体「地域構想推進プラットフォーム(仮称)」を設置して人材を育成する仕組みづくりを進めることや、地域の大学が産学官金などの関係者と研究・教育について連携する「地域研究教育連携推進機構(仮称)」の仕組みの導入などが盛り込まれた。

 答申案では、こうした改革を進める上で、高等教育に対する投資は「未来への先行投資と考えるべき」として、公財政支援の充実を打ち出している。国立大学法人運営費交付金など機関補助と奨学金などの個人支援について、「バランスよく組み合わせながら高等教育機関の総収入を拡大し、高等教育の質の向上、規模の適正化およびアクセス確保を共に実現していくことが必要である」と強調した。

 また、答申案のタイトルは当初、「急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方について」だったが、永田分科会長の判断で、「我が国の『知の総和』向上の未来像 ~高等教育システムの再構築~」に改められた。永田分科会長は「少子化だけが課題ではなく、『知の総和』を頭にもっていきたいと判断し、最後の最後で変えさせていただいた」と説明した。

 合同会議では、公財政支出の必要性をさらに強調するよう求める意見などが出されたが、答申案はおおむね了承され、文言修正は永田分科会長に一任された。これを受けて答申案は年度内に中教審総会に示される見通しで、文科省は答申を踏まえて今後10年程度の工程を示した政策パッケージを策定して具体的な施策を実行していくことにしている。

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