学校のバリアフリー化で整備目標見直しへ 検討部会を設置

学校のバリアフリー化で整備目標見直しへ 検討部会を設置
学校施設のバリアフリー化に関する検討部会の設置を決めた調査研究協力者会議の初会合=オンラインで取材
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 令和の日本型学校教育への対応に向けて、文部科学省の「学校施設の在り方に関する調査研究協力者会議」は1月27日に初会合を開き、今後の学校施設整備に関する検討を開始した。特に法改正で努力義務化された公立小中学校のバリアフリー化が課題に挙げられ、「学校施設のバリアフリー化の推進に関する検討部会」を設置することが決まった。今夏をめどに公立小中学校のバリアフリー化に関して、新たな整備目標を設定する。

 学校施設を巡っては、1人1台の学習者用端末の活用を前提とした個別最適な学びへの対応や、35人学級の実施に伴って生じる教室不足への対応、老朽化施設の長寿命化、防災機能の強化などが課題となっている。中でも、2020年に改正されたバリアフリー法で、既存の公立小中学校施設のバリアフリー対応が努力義務化され、計画的な取り組みを加速させる必要が生じている。

 文科省では25年度末までに全ての学校でスロープなどによる段差解消を実施したり、要配慮児童生徒が在籍する学校にはエレベーターを設置したりするといった整備目標を掲げ、バリアフリー化のための改修事業の国庫補助率引き上げなどを行っているが、現状のペースでは目標達成は厳しい見通しだ。

 そこで、調査研究協力者会議にバリアフリー化の推進策を集中的に議論する検討部会を設け、6月までに整備目標の取りまとめ案を示すことにした。これを受けて文科省は夏ごろに新たな整備目標を設定する。

 初会合では、委員から学校施設のバリアフリーの捉え方についての意見が相次いだ。

 市川裕二委員(全国特別支援学校長会副会長、東京都立立川学園校長)は、障害のある子どもと地域の小、中、高校が共に学ぶ取り組みを推進する観点からも、学校施設のバリアフリーは推進する必要があると強調。

 「エレベーターがあるだけではバリアフリーにはならず、動線の問題がある。障害のある子もない子も一緒に動く形の中で、バリアがない形が一番よい。障害のある子だけが別行動でエレベーターに乗るのではなく、障害のない子と一緒に動けるユニバーサルな施設が必要になってくる」と話した。

 垣野義典委員(東京理科大学創域理工学部建築学科教授)は「バリアフリーという言葉が社会の中で一般化されるようになってから時間がたち、当初定義されたバリアと今のわれわれがイメージする学校現場でバリアと思われるものが、ずれてきているのではないか。もう少しバリアの枠組みがかなり増えてきているような気がしているので、この会議の中でバリアが何から何までを指しているのか、その射程圏を一度定義した方がいい」と指摘。

 長澤悟委員(東洋大学名誉教授)は「バリアフリーは社会基盤整備で言えば大事な目標だと思うが、一方で学校をトータルで考えたときに目標となるのは、バリアフリーというよりもインクルーシブな教育の場、あるいは、どの子どもたちにとっても居場所になり、その子どもだけでなく、みんなにとっていい環境にしていくということになる。バリアフリーを語ることが、子どもの成長の場や地域の人たちの場としての学校そのものを捉え直すキーワードとして議論していければ」と、期待を寄せた。

 

【キーワード】

インクルーシブ教育 例えば、障害のある子どもがその子どもの状態に応じた支援を受けながら、地域の公立学校の通常学級でクラスの一員として過ごせるようにするなど、さまざまなマイノリティーの子どもをはじめ、誰もが排除されず、多様な子どもたちが共に学べる包摂的な教育システムを目指す考え方。

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