教育費の負担軽減策に優先順位を 高校WGが審議まとめ案

教育費の負担軽減策に優先順位を 高校WGが審議まとめ案
審議まとめ案を検討したWGの第16回会合=オンラインで取材
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 今後の高校教育の在り方を検討していた中教審のワーキンググループ(WG)は1月31日、第16回会合を開き、審議まとめ案について大筋で了承した。授業料無償化などの高校の教育費の負担軽減策については、限られた財源の中で、投資先や支援内容を丁寧に検討し、緊急性の高いものから優先順位を明確にして取り組むべきだとした。

 WGは2022年11月に議論を開始し、23年8月に審議の中間まとめを出している。中間まとめでは高校教育の課題を▽少子化が加速する地域における高校教育の在り方▽全日制・定時制・通信制の望ましい在り方▽社会に開かれた教育課程の実現、探究・文理横断・実践的な学びの推進――の3つに整理。

 特に、地方の小規模な高校で多様な科目を学べたり、不登校生徒が自宅から学習したりできるようにするため、遠隔授業の拡大を打ち出した。それを受けて、遠隔授業の要件の弾力化や制度改正などが行われた。

 この日示された審議まとめ案は、こうした中間まとめ以降に行われた施策などを反映しつつ、その後の議論で示された論点を書き加えた。

 中でも、高校の教育費の負担軽減については、近年、一部の都道府県で高校の授業料の独自支援が大幅に充実されている一方で、▽自治体の独自の支援が異なることで、都道府県境を超えて通学する高校生に不公平感が生じている▽都道府県が独自に行う支援の仕組みによっては、私立学校の特色ある多様な教育の担保の観点から懸念がある▽低所得者世帯で入学時の支出が重なる時期の学用品費などの教育費支出が困難である――などの課題を挙げた。

 その上で、家庭の経済状況に関わらず全ての高校生が安心して教育を受けられるよう、高校の教育費の負担軽減策を進めることは重要だとしつつ、限られた財源の投資先や支援内容を丁寧に検討する必要があり、緊急性の高いものから優先順位を明確にして取り組むべきだとした。

 また、審議まとめでは通信制が多様な生徒の学びに対するセーフティーネットになっている現状があるとしながらも、不適切な学校運営や教育活動を行っている通信制高校もあるため、一層の質の確保・向上が求められると強調。具体的方策に、近年増加している広域通信制高校の設置認可状況の把握や、法令に基づいた適切な情報の公表を通信制高校に対して促していくことを盛り込んだ。

 通信制高校の質の課題については、この日の会合でも複数の委員から意見が相次いだ。

 篠原朋子委員(東京都国立市教育委員、前学校法人NHK学園理事長)は、通信制高校の不適切な教育活動の改善は、これまでも言われ続けてきたとし、「法令に基づいて公表せよと言っているのに、なぜそれが守られないのか不思議に感じてしまう。受け止め方が学校法人によって違うのではないか。さまざまな施策を出したときに、各学校でいつ実施する予定なのかを調査するといったような、キャッチボールのできる流れが必要だ」と、学校へのフォローアップなどを通じて働き掛けを強めていくことを提案した。

 岩本悠委員(地域・教育魅力化プラットフォーム代表理事、島根県教育魅力化特命官)は「広域通信制を各都道府県が所轄庁として全部管理すること自体が、無理筋なのではないか。もっと実態に即した効果的な管理・監督の仕方があると思う」と、抜本的な対策の見直しを求めた。

 審議まとめ案の修正は、荒瀬克己主査(教職員支援機構理事長)に一任され、大筋で了承された。

 

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通信制高校 自宅などで生徒が各自で学習を進め、学習課題の添削やスクーリング、試験などで指導・評価をする。自分のペースに合わせ、多様なメディアを利用した学習ができる。近年、複数の都道府県にまたがって生徒を募集する広域通信制高校に入学する生徒が増えている。

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