社会の変化に伴う新たな人権課題に対応していくため、法務省は第二次人権教育・啓発に関する基本計画の中間試案についてこのほど、パブリックコメントの募集を始めた。2月26日まで意見を募集する。課題横断的な人権課題としてインターネット上の人権侵害を挙げ、学校における情報モラル育成に向けた指導の積極的な推進を掲げた。
「人権教育・啓発に関する基本計画」は人権教育・啓発推進法に基づき、2002年に第一次計画が策定された。しかし、第一次計画策定以降、日本では国際化や情報化、少子高齢化が進み、人々の人権意識の高まりとともに、顕在化した人権課題もある。こうした背景から法務省では第二次基本計画を策定することにした。
昨年6月の人権教育・啓発関係府省庁連絡会議で見直しを始めた第二次基本計画。中間試案では、学校教育における人権教育について、あらゆる学校、教員が人権教育に取り組みやすい環境の整備や指導方法の改善に向けて、実践や教材の情報収集や調査研究を行うこと、道徳教育の推進に力を入れるとともに、各学校で人権に配慮した学習指導、生徒指導、進路指導、学校運営に努めるとした。
その上で、あらゆる教育活動の中で規範意識を培い、暴力行為やいじめが許されないという指導を徹底するなど、子どもが安心して楽しく学べる環境を確保することや、教職員による子どもの人権を侵害するような行為は断じてあってはならないことを明記した。
また、課題横断的な人権課題として、インターネット上の誹謗(ひぼう)中傷やプライバシーの侵害、差別を助長する表現の掲載、子どもの性被害などを指摘。インターネットを適切に利用するための教育や啓発の推進に加え、加害者にならないための責任ある情報発信という観点からの教育・啓発を強化していく必要があると指摘。
学校で情報モラルを育成するための指導を行うことや、責任ある情報発信の意識を社会に浸透させるため、あらゆる世代に対し、個人の名誉やプライバシーへの正しい理解やインターネットリテラシーの向上を図る啓発活動を推進するとした。
第二次基本計画の中間試案はe-Govのホームページで確認できる。
【キーワード】
人権教育 人が生まれながらに持っている人権を尊重する意識を高めていくことを目的とした教育活動。学校教育のさまざまな場面を通じて、自分の良さや可能性を認識し、さまざまな他者を価値ある存在として大切にすることを学び、社会の中で他者と共生し、持続可能な社会のつくり手となることを目指す。
情報モラル 社会の情報化による影響やリスクを理解し、その問題に適切に対処しながら、情報社会に参画する態度を育てる教育。情報機器の使い過ぎによる健康への影響、情報セキュリティーへの意識、犯罪やトラブルの予防、権利侵害など多岐にわたり、情報や道徳をはじめ、さまざまな教育活動の中で扱われる。