今国会で教職調整額の引き上げなどを盛り込んだ給特法改正案が審議されるのを踏まえ、現職教員や研究者、教育関係者らで構成される「給特法のこれからを考える有志の会」は2月4日、衆議院第二議員会館で院内集会を開いた。法案の審議に当たって、国による教員勤務実態調査を2029年度までに実施することや、時間外在校等時間の上限を超えた場合に、管理職への罰則規定を設けることを求めるとともに、廃止を含めた給特法の見直しの議論は継続していくべきだとした。
公立学校の教員の処遇改善や働き方改革を巡り、文部科学省と財務省は昨年末、25年度予算案で教職調整額を現行の4%から5%に引き上げ、30年度までに10%にすることで合意。学校の働き方改革を強力に推進し、29年度までに時間外在校等時間を月平均で30時間程度に縮減する目標を立てている。
有志の会メンバーで岐阜県立高校教諭の西村祐二さんは、この目標について「ここに政府の本気があるのだと私は信じて、もう少し頑張り続けようと思えた。今、教職の魅力を取り戻すために必要な3つの柱は『残業削減』であり『残業削減』『残業削減』だ。誰も気を病むことがない、心を病むことがない、誰も死ぬことがない教育に、いち早くしていただきたい」と呼び掛けた。
その上で有志の会は、法案の審議に当たり、持ち帰り業務の時間なども把握している教員勤務実態調査を29年度までに実施することや、月45時間、年360時間以内とされている時間外在校等時間の上限を超えないようにするために、管理職への罰則規定を設けることを提案。今後も継続して給特法の見直しを議論していくよう求めた。
給特法の在り方について鈴木雅博明治大学准教授は「やはり給特法を廃止して労働基準法37条の残業代支給を目指すということが前提だ。教職調整額は労働時間が長い傾向にある若手教員への給付が手薄になる一方で、相対的に労働時間が短いベテラン層の教員に手厚い給付になり、逆進的な制度で問題がある」と指摘。合わせて教員の授業の持ちコマに上限を設けることや、改訂に向けた議論が始まった学習指導要領の内容の削減を検討すべきだとした。
また、自治体や学校と連携して学校の働き方改革に取り組んでいるワーク・ライフバランスの小室淑恵代表取締役社長は、教職調整額の引き上げなどを提言した中教審答申で、勤務間インターバルの導入についても言及されたことを評価。「8時間や9時間の勤務間インターバルはほぼ何の意味もない。7時間睡眠を確保し、通勤時間や生活時間を考えると、11時間である必要がある。今回答申に盛り込まれた勤務間インターバルが、8時間や9時間とならないように、11時間とするようにしてほしい」と注文した。
こうした有志の会の問題提起に対し、自民党衆院議員の柴山昌彦元文科相は「教職調整額の改革は、われわれが4%を10%にするというのを『骨太の方針』に入れたにもかかわらず、1年ごとに1%刻みという、われわれとしては不本意な結果となり、その分しっかり働き方改革で勤務実態が改善されることが示されるような形を取っていくことが必要だ」と強調。
「待遇改善をすることも、実際に成果をきちんと出していくことも、実際に法改正が実現した後の現場とのコミュニケーションをしっかりと行っていく必要がある」と話した。
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給特法 公立学校の教員の職務や勤務の特殊性に基づき、給与や労働条件の特例を定めている法律。この法律によって、公立学校の教員は給与に教職調整額を上乗せして支給する代わりに、時間外勤務手当(残業代)は支払わないとされ、長時間労働に歯止めがかからない一因になっているという指摘がある。
勤務間インターバル 勤務終了後、次の勤務開始までに一定以上の休息時間を設けることで、労働者が生活や睡眠に充てる十分な時間を確保できるようにする制度。欧州連合(EU)では全ての加盟国で義務化されており、日本でも2019年から努力義務となっている。国家公務員などでは、その目安は11時間とされている。