生徒が主体の共創空間をつくる――。学校の改築や改修、空間レイアウトの更新など、「明日の校舎づくり」に挑戦するプロジェクトを募集した、文部科学省「CO-SHAソウゾウプロジェクト」の最終発表会が2月7日、オンラインで開催された。同プロジェクトに採択された3校が、それぞれ生徒が主体となってつくり上げた多目的空間や、教育DXに向けた教室環境などについて成果を報告した。
文科省では学校施設整備・活用のための共創プラットフォーム「CO-SHA Platform」を開設。その活動の一環として、学校の改築や改修、教室空間のレイアウトの更新などに取り組みたい学校設置者や教職員を対象とした「CO-SHAソウゾウプロジェクト」を立ち上げ、今年度は3団体が採択された。
採択されると、1プロジェクトあたり80万円(税込)を上限とする経費の支給があるほか、CO-SHA Platformのアドバイザーなど専門家によるサポートなどが受けられる。
この日の最終発表会では、女子美術大学付属高校・中学校と聖学院中学校・高校、大阪府泉大津市立小津中学校の3校が、それぞれのプロジェクトの活動成果を発表した。
そのうち、小津中学校は生徒・教員・保護者・地域の「食べる・集まる・催す」の拠点となる、フリースペース「学校フードコート」の設置に取り組んだ。
同校では、授業や行事、校則などを生徒主体で創っており、その活動の中でミーティングやイベントを気軽に行うスペースが欲しいと考えていた。現在、校舎の改修工事中で、以前は職員室として使っていたスペースが空くことになり、そこを生かそうとプロジェクトは進んでいった。
担当した同校の倭倫子指導栄養教諭は「まず、このプロジェクトのメンバーを募集した。なるべく多くの生徒に参加してほしかったので、生徒が忙しい放課後ではなく、ランチミーティング方式にしたところ、19人が集まってくれた」と報告。
生徒からは「イベントやライブをしたい」「ファミレスのような席があれば」「バーカウンターがほしい」「緑が欲しい」など、さまざまな意見が出てきた。
また、学校運営協議会委員でもある一級建築士や家具作家など、有識者を招いたミーティングも開催。専門家ならではの意見やアイデアをもらい、生徒の発想の幅も広がっていったという。
その後は実際の空間でミーティングを重ね、レイアウトや家具について具体的に検討していった。生徒たちの想像以上に大きな空間だったので、「シンボルとなる机を置いてはどうか」というアイデアも。廃棄予定だった旧技術室の机をリメークし、生徒らがシンボルとなる机をつくり上げていった。
レイアウトについて、倭指導栄養教諭は「それぞれがやりたいことによって配置を換えられるようにしたので、レイアウトに完成形はない」と話す。バーカウンターやファミレスのような席やストリートピアノも設置するなど、生徒の思いをできるだけ実現する形になり、その空間は「OZU Hygge」と名付けられた。
「休み時間ごとにピアノの音が聞こえて、みんながくつろいでいる。今日の2時間目の理科の自由進度学習でもこのスペースを活用しているなど、多目的な空間になっている。生徒のアイデアと大人のサポート、そして終始楽しく取り組んだことで、最高の空間を生み出せたのではないか」と倭指導栄養教諭は笑顔を見せた。
同プロジェクトに伴走した神奈川大学建築学部の立花美緒准教授は「何よりも生徒が楽しそうに過ごしていることが印象的だった。これからの生徒の自立的な学びや、学校生活を支える場として、全国の学校にとって参考になる事例となったのではないか」と感想を寄せた。
また、3校の発表を受け、東京都立大学の上野淳名誉教授は「フリースペースのような教室や空間がある学校も多い。それをいかに楽しいスペースに変えていくかということを、この3校の事例が示してくれた。教師と生徒が共に考えるワークショップ形式で、生徒の主体性を引き出すことに成功していることも素晴らしかった」と講評した。