災害時の学校再開に必要な備えとは 能登半島地震から学ぶ

災害時の学校再開に必要な備えとは 能登半島地震から学ぶ
能登半島地震の後、豪雨災害で被害を受けた学校の様子=提供:輪島市教委
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 能登半島地震の際に学校再開に取り組んだ地元の教育委員会や他県の学校支援チームの体験を通じて、今後の大規模災害への備えを考える文部科学省主催のセミナーが2月18日、オンラインで開かれた。現在、同省は大規模災害に備えた「被災地学び支援派遣等枠組み(D-EST)」の構築を進めており、全国の教育関係者に向けて「災害時の派遣とともに、支援の受け入れも想定した備えを検討してほしい」などと呼び掛けた。

 同省は大規模災害などに備えて毎年防災対策セミナーを開いており、今回は能登半島地震の際に学校再開に取り組んだ石川県内外の関係者の話を通して、今後の備えを考えようと企画された。

 初めに同省文教施設企画・防災部の梅﨑聖災害対策企画官が、現在、同省が大規模災害に備えて進めている「D-EST」の仕組みなどについて紹介した。D-ESTは大規模災害の発生時に文科省職員を派遣してニーズ調査に当たることや、被災地内外の学校支援チームと連携して学校再開などを支援する枠組み。

 梅﨑企画官は、能登半島地震や昨年9月の能登豪雨での支援活動について説明し、「被災地では子どもだけでなく教職員や教委職員も被災者となり、学校再開には被災地外からの支援が重要となる。派遣支援の体制整備を検討するとともに、支援の受け入れも想定して備えてほしい」などと呼び掛けた。

 石川県輪島市教委の平田勝教育総務課長は、能登半島地震で市内全域が壊滅的な状況となる中、市全域を3エリアに分けて学校を再開するとともに、130キロ離れた白山市に約250人の中学生を集団避難させた経緯などを説明。学校再開に向けて、熊本県と三重県の学校支援チームからサポートを受けたことを紹介した。

 この中で平田課長は、他県からの支援で助かったこととして、「児童生徒以上に教職員に対する心のケアの需要も多く、学校の管理職では聞き出せない話も聞いていただいた。また、地元の養護教諭より早く、児童の不安定な様子に気付いてくれた」などと具体的な事例を紹介し、「他県から支援を得ながら学校を再開する方法もあると体感した。このような支援の輪が全国で広がればいいと思う」と語った。

 石川県珠洲市に学校支援チームを派遣した兵庫県教委教育企画課の中森慶指導主事は、阪神淡路大震災の経験を生かそうと2000年に教職員による震災・学校支援チーム(アース)」を設置し、各地で支援活動に当たってきたことを説明した。珠洲市には、地震発生後の1月15日から3月15日まで延べ103人を派遣したことを紹介。救援物資の仕分けなど避難所運営をサポートすることで、現地の教員が学校再開や子どもへの対応に専念できるように取り組んだことを説明した。

 また、支援活動から職場に戻った教職員は、子どもや教員に体験を語って共有に努めているといい、「今年度は阪神淡路大震災から30年の節目を迎えた。これまでの経験や知見を、今後もしっかりと語り継いでいきたい」と述べた。

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