食の大切さを子どもたちに実感してもらおうと、東京都世田谷区にある東京都市大学付属小学校(岡野親校長、児童460人)では、東急ホテルズ&リゾーツと連携し、年間を通じた食育の授業に取り組んでいる。2月17日には、同社が運営する東急ホテルズとセルリアンタワー東急ホテルで総料理長を務める福田順彦さんが講師となり、4年生の児童がイワシの手開きに挑戦。ソテーにして、命に感謝しながら味わった。
同小では昨年度から4年生を対象に全12回の食育の授業を実施し、福田さんらが講師となって、五感を意識した食育の講義や、子どもたちが実際に育てた野菜を使ったサラダづくりなどの活動を展開している。
11回目となるこの日の授業のテーマは「命の大切さ」。岩手県から直送されたイワシを手で開いて背骨を外し、塩コショウで味付けしただけのシンプルなソテーをつくることに挑んだ。
最初に福田さんは、児童らを集めて手開きを実演しながら、鮮度の良いイワシの見分け方や上手な背骨の取り方を説明。フライパンをよく温めて、身全体がきつね色になるように焼くコツを伝えた。
続いて子どもたちはグループに分かれて、実際に1人1尾ずつ、恐る恐るイワシを手で開いていった。オリーブオイルを引いたフライパンの上でイワシが焼けてくると、香ばしい匂いが教室に広がった。
子どもたちは「今まで食べたイワシの中で一番おいしい」「今日の夕ご飯もこれにしたい」などと感想を言い合いながら、舌つづみを打っていた。
福田さんは「わずかな塩味を感じてもらうためにつくった薄い水溶液でも、ほとんどの子どもたちは違いが分かる。心身の発達段階も考えると、10歳前後は食育を教えるのに一番適している」と強調。
「今日は、切り身ではなく1尾の魚を自分の手で開いて食べてもらった。命の尊さや生産者への感謝、そして、この季節でないと味わえない自然のおいしさを感じ取ってほしい。この取り組みをきっかけに、家族と食卓を囲みながら食について会話をしてもらえたら」と期待を寄せる。
【キーワード】
食育 さまざまな経験を通して、食に関する知識やバランスの良い食事を選択する力を身に付け、健全な食生活を実践できる力を育む目的で行われる教育活動。政府は食育基本法に基づき、食育推進基本計画を策定し、省庁間で連携して食育の推進に取り組んでいる。