部活動の地域移行「学校との連携」巡り激論 地域文化芸術活動WG

部活動の地域移行「学校との連携」巡り激論 地域文化芸術活動WG
地域文化芸術活動WGの5回目会合は文科省で開催、Youtubeでも中継された=撮影:徳住亜希
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 文化庁は2月20日、地域移行後の部活動と文化芸術活動の在り方について考える「地域文化芸術活動ワーキンググループ(WG)」(主査:北山敦康・静岡大学名誉教授)の5回目会合を開催した。昨年12月、同庁・スポーツ庁の「部活動改革に関する実行会議」が発表した中間とりまとめの提言案をもとに、北山主査が「運営団体・実施主体の体制整備」「指導者の質の保障・量の確保」をはじめ8つの論点を掲示。2026年度以降の運営体制について、各委員から「指導者確保の意味でも学校との連携は重要」「家庭や地域が担うことまで学校がやり過ぎた。ここが転換期」など、活発な意見が出た。

 部活動改革を巡っては昨年12月発表の「中間とりまとめ」で、26~31年度の6年間を「改革実行期間」に設定し、名称を「地域移行」から「地域展開」に改める方針とした。また同案には、休日の部活動について実行期間内に「原則、全ての部活動の地域展開を目指す」とし、平日も「地域の実情に応じた取り組みを進める」ことなどが盛り込まれている。

 20日のWGでは「運営団体・実施主体の体制整備」について、学校との連携を重視する意見が複数挙がった。星弘敏委員(全日本吹奏楽連盟常任理事)は「学校教育の中で人間育成の役割を果たしてきた」と述べ部活動の意義を強調、「学習指導要領との兼ね合いもあると思うが、そこをないがしろにすると教育の崩壊に向かってしまう」と地域移行による影響を懸念した。

 西野直樹委員(兵庫県加古郡播磨町立播磨中学校校長)は「私も崇高な使命感の中でクラブ活動をしてきた」としながらも、「今思えば、地域や家庭が担うべきことまで学校がやり過ぎた。ここが転換期」と指摘。学校の働き方改革の重要性に触れ、「兼職兼業をとがめるなど校長の理解が不足している。それも踏まえ改革を進めなければならない」と話した。

 さらに「指導者の質の保障・量の確保」での課題として、大坪圭輔委員(武蔵野美術大学名誉教授)から「(指導者の)質の保障のため、中間とりまとめには『指導者資格の認定』とあるが、どういった指導の手引きやマニュアルがあるのか、その中身が示されないと人材育成の青写真が示せない」との指摘があった。

 木村博明委員(富山県朝日町教育委員会教育長)は「保護者にとって『学校も含めた地域』であることが安心材料になっている」と地域の実情を明かし、移行後の指導者についても「教育的意義の発展継承が求められる」と主張。学校教育が果たしてきた役割の大きさから「ソフトランディングの方法を考えなければ地域移行は進まない。教育的意義を具体的にどう連携させていくのか。国が一つの目安を示してくれるとありがたい」と語った。

 「障害のある生徒の活動機会の確保」については、鈴木健一郎委員(新潟県佐渡市教育委員会教育次長)が「佐渡市の地域クラブも特別支援学校に案内を出しているが、不安もあってか申し込みがない。指導者側にも対応への不安がある。支援員などに障害に対する理解の深い人がいるだけで、ぐっと参加のハードルは下がるのではないか」と指摘。さらに前出の大坪委員は「多様な子どもに文化・スポーツ活動に親しむ機会を確保する部活動改革は、ダイバーシティー実現の方策で、社会投資でもある。障害に対する知見や理解は、指導者の人材育成の中の重要項目に入れなければいけないと思っている」と強調した。

 WGでは今後、生徒の移動手段や不適切な指導の防止策といった課題をさらに検討、春ごろに「最終とりまとめ」の報告を行う予定だ。

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