「ここにいていいんだ」と実感 対話で学校が変わった事例を報告

「ここにいていいんだ」と実感 対話で学校が変わった事例を報告
午後の部では埼玉県戸田市立美女木小学校の田野正毅校長(右)、勝俣武俊前教頭(中央)、沖縄県うるま市立中原小学校の松田健史校長(オンライン)が登壇、モデレーターをかえつ有明中学高校の佐野和之副校長(左)が務めた=提供:学校の話をしよう
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 教育現場の対話型組織開発を手掛けるNPO法人「学校の話をしよう」がこのほど、事例の共有と教育現場の当事者の対話の場として「DIALOG WITH SCHOOL CONFERENCE vol.1」を、都内の会場とオンラインのハイブリッドで開催した。この日のイベントでは、学校現場で課題に直面する教員や教育に携わる当事者を対象に、これまでの同団体とともに取り組んできた対話による学校づくり、学びづくりの取り組み内容やプロセスなどが共有された。

 「学校の話をしよう」は、教員らが対話を通して学び合えるプログラム「チームを考える学校」をスタート。2021年から対話型組織開発を用いて、学校内での対話の場づくりを支援してきた。

 「私が私とつながる」をテーマとした第一部には、沖縄市立小学校の渡名喜聖教諭らが登壇。渡名喜教諭は昨年度まで6年間勤務した前任校での対話の時間について振り返った。前任校では21年度の後半から対話の時間が始まり、22年度から本格実施。渡名喜教諭は23年度に対話で中心的な役割を担うようになった。

 「対話では話す方にフォーカスが当たりがちだが、聴く方にもフォーカスが当たっていくようになった。それぞれにバックグラウンドがあることを意識し始めたことが、自分の中での大きな変化だった」と語った。

 その後は、教員や子どもたちを見る時にも、目の前の事象だけでなく、その背景にどんな思いを持っているのかまで意識するようになったという。

 「ずっと楽しく働いてきたが、人と人とが対話でつながることで、もっと楽しくなる、つながりが広がっていくことを感じた。毎日学校に行くのが楽しく、『ここにいていいんだ』と実感していた」と振り返った。

 イベントではまた、同団体が全国の公立小中学校の常勤教諭(有効回答359人)を対象に実施した「『学習する組織』に関する実態調査」の結果についても報告された。

 就業継続意志について聞いたところ、「今の勤務校で教員として働き続けたい」は39%、「他の学校で教員として働き続けたい」は33%、「教員ではなく別の職種で働きたい」が14%と続いた。このうち、現任校での就業を継続したくない理由について尋ねたところ、「時間外勤務(残業)が多い」が最も多く、「職場の人間関係があまり良くない」が続いた。

 また「解決の難易度は高いが、解決したいと思う課題」については、児童・生徒の学力や教員の働き方に加え、「教員のメンタルヘルス」や「教員間のチームワーク」が続いた。その有効な解決策として、「教職員の連携や協働」「教職員と児童生徒や地域・保護者との対話」「教職員間の対話」などが上位に入り、ここでも対話の重要性が浮かび上がった

 続いて、同団体が関わったある小学校の変化についても紹介された。同校では、対話型組織開発に取り組んだことで「心理的安全性」や「違いの尊重」「新しいアイデアの尊重」「教師効力感」などが向上し、子どもたちの自己肯定感や学校満足度の改善にもつながったという。

 同団体理事の吉村春美氏は「対話型組織開発により、協働するチームになっていく。困っているときに『助けて』と言えるし、新しいことにチャレンジできる学校に変わっていくことがデータ上でも分かってきている。また、子どもたちに『自信を持たせてあげられる』と感じている教員が増えることで、子どもにも効果が表れている」と説明した。

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