中教審の第141回総会が2月21日、文部科学省で開かれ、急速な少子化が進む中での高等教育の在り方についてまとめた答申「我が国の『知の総和』向上の未来像~高等教育システムの再構築~」が、荒瀬克己会長から阿部俊子文科相に手渡された。少子化で大学進学者数が大きく減少することが予想される中、「質の向上」「規模の適正化」「アクセス確保」の3つを柱に具体的な方策を示し、特に規模の適正化に向けては再編・統合の推進や縮小・撤退への支援を明確に打ち出した。同省は答申を受けて、今年夏をめどに今後10年程度の工程を示す政策パッケージの策定を進める。
高等教育の在り方を巡る諮問への答申は2018年以来7年ぶり。中教審では特別部会を中心に、急速な少子化が進む中、40年以降の社会を見据えた高等教育の目指すべき姿やその方策について約1年半にわたって議論を続けてきた。
答申では、直面する課題として、40年の大学進学者数は21年と比べて約27%減の46万人になるとの推計を示した上で、持続可能な活力ある社会に向けて「知の総和」の向上が必須だと強調。「質の向上」「規模の適正化」「アクセス確保」の3つを柱に今後の政策の方向性と具体的な方策を示した。
「質の向上」に向けては、学びの質を高めるために厳格な成績評価や卒業認定をした上で、成績が不十分な学生には進級・卒業を認めないなど「出口における質保証」の促進とともに、在学中にどれだけ力を伸ばしたか、大学の教育の質を数段階で評価するなど、新たな評価制度への移行が示された。
「規模の適正化」では、前回の答申で踏み込まなかった再編・統合の推進や縮小・撤退への支援を明確に打ち出した。定員割れや財務状況が厳しい大学を統合した場合、助成金の減額などのペナルティー措置を緩和する制度改善をはじめ、一時的に定員を減らしても再び人気が出たら定員を戻しやすくする仕組みの創設などの縮小への支援や、撤退の場合も在学生の卒業まで学修環境を確保する支援を盛り込んだ。
「アクセスの確保」では、地域の人材を育成するために大学や自治体、産業界で議論する協議体「地域構想推進プラットフォーム(仮称)」の設置を促進する。現在、全国にこうした機能を持つプラットフォームが273あるが、活発に運営されていない組織も多く、国の支援でコーディネーターの配置などを進める。また、地域の大学が産学官で研究・教育について連携する「地域研究教育連携推進機構(仮称)」の仕組みづくりも進める。
こうした方策とともに、答申では「高等教育の投資は未来への先行投資」と強調し、支援方策の在り方も示した。短期的取り組み(2~3年以内)として公財政支援の充実や寄付獲得など社会からの支援強化を、長期的取り組み(5~10年程度)としては授業料の最低ライン設定など教育コストの明確化と負担の見直しに向けて検討を進めることを盛り込んだ。
総会では、答申づくりの中心となった中教審大学分科会の永田恭介分科会長(筑波大学長)が「ここからが勝負であり、文科省は政策パッケージを推進するとともにフォローアップもしっかりして、この厳しい課題に対応できるような施策を進めてほしい」と述べた。
答申を受け取った阿部文科相は「急速な少子化が進行する将来社会を見据えた高等教育の在り方について、的確に提言をいただいたと承知している。提言をしっかりと受け止めながら、必要な制度改正を含め、関連施策の推進に全力で取り組んでいく」とあいさつした。
同省は答申を受けて、今年夏をめどに高等教育の制度改革や財政支援など今後10年程度の工程を示す政策パッケージを策定する。