急速な少子化に対応した高等教育の方向性について中教審が答申をまとめたことを受けて、阿部俊子文科相は2月25日の閣議後会見で、「夏ごろをめどに政策パッケージを示し、速やかに具体的な方策の実行に取り組みたい」と施策推進への意欲を示した。同答申では、大学進学者数の大幅な減少を見据えて「質の向上」「規模の適正化」「アクセス確保」を柱に具体策の方向性を示しており、中教審委員からは財政的支援や地方創生など、文部科学省に幅広く対応を求める要望が相次いだ。こうした声も踏まえて同省は今年4月に「地域大学振興室」設置するなど体制を整備するとともに政策パッケージ策定を急ぐことにしている。
阿部文科相は中教審の答申を受けて、「高等教育全体の規模の適正化を図りつつ、地理的・社会経済的にアクセス確保策を講じて教育研究の質を高めていくということがまさに重要だ。夏ごろをめどに10年程度の工程について政策パッケージを示して、それぞれ速やかに具体的な方策の実行に移れるように取り組みたい」と述べ、具体策の実行を急ぐ考えを示した。
今回の答申では、急速な少子化は中間的規模の大学が1年間で90校程度減る規模で進んでいると強い危機感を示し、タイトルを「我が国の『知の総和』向上の未来像」として、「質」「規模」「アクセス」の3つを柱に具体策の方向性を示した。学びの質を高めるため厳格な成績評価や卒業認定をする「出口における質保証」や再編・統合の推進、地域人材を育成するために大学や自治体、産業界で議論する協議体の設置促進などを打ち出している。また、支援方策の在り方として、短期的には公財政支援の充実などの支援を強化し、長期的には授業料の最低ライン設定など教育コストの明確化と負担の見直しに向けて検討を進めることを盛り込んだ。
答申をまとめた今月21日の中教審総会では、政策パッケージ策定に向けて各委員から期待や要望が相次いだ。今回の答申まとめの中心となった永田恭介副会長(筑波大学長)は「大学進学者数の激減が始まるのは10年後の2035年からだが、その時点でどうしようと考えてもうまくいくはずはない。この10年間を最後の準備期間と考えて輝かしい未来につなげようと答申をまとめた。文科省には政策パッケージを策定、推進するとともにフォローアップもしっかりとしてほしい」と要望した。
渡辺弘司委員(日本学校保健会副会長、日本医師会常任理事)は「早急に解決すべき課題は、大学の教育と研究レベルの低下ではないか。大学が本来の役割を果たすためには、研究費や人材が確保できる財政的な支援が必要だ。日本の将来のため抜本的な対応をお願いしたい」と強調した。清原慶子委員(杏林大学客員教授、前東京都三鷹市長)は、地方創生の推進との関係が重要だと指摘し、「ぜひ全国の地域の実情に応じて適切な高等教育機関の配置とその機能が発揮できる条件整備を、高等教育機関のみならず、国、自治体、産業界等との連携の中で推進するような政策パッケージを編み出してほしい」と要望した。
文科省では今年4月に各地域の高等教育へのアクセス確保を図るための司令塔として「地域大学振興室」が設置する予定で、こうした地方支援の体制整備を進めるとともに、答申を踏まえた政策パッケージ策定を急ぐことにしている。