学校の働き方改革や教員の処遇改善などを進めるため、国会に提出された給特法改正案と2025年度予算案を巡り、日本教職員組合は2月26日に記者会見を開き、業務削減策や、教職員定数改善について不十分だと指摘した。日教組では学校現場の声を集め国会での審議に届けるため、街宣行動やアピール集会を開いていくとしている。
中教審答申を受けて、昨年末に文部科学省と財務省は学校の働き方改革と教員の処遇改善、指導・運営体制の充実に向けて、教職調整額を30年度までに10%に引き上げることや、若手教師のサポートなどを行う新たな職・級の創設、26年度からの中学校での35人学級の実施、小学校教科担任制の4年生への拡大などで合意。これに伴い、政府は国会に給特法改正案を提出している。
会見で山﨑俊一書記次長は「法案や25年度の教育予算では、学校の長時間労働を是正するための業務削減策や、教職員定数改善について、不十分という評価を日教組はしている。 このままだと賃金は少し上がるけれども、働き方改革はこれまでと変わらないということが懸念される。学校全体の業務が減り、そして誰もが働きやすい職場になっていくことが、問題になっている教員のなり手不足の解消にもつながる」と強調した。
薄田綾子政策局次長(労働政策)は、両省の合意内容に関連した政策の不十分な例として、中教審答申の段階では小学3年生からとなっていた教科担任制の拡大が、4年生からとなった点を挙げた。
その上で「確かに小学校の教科担任制は、効果が上がっているという話もある。空き時間ができたという現場の声もたくさんあるが、交換授業をするだけなので授業時数は変わらない、さらに増えてしまうという声もある。希望すれば当然、全ての学校にそのための人が来て、ちゃんと専科の教員を付け、空き時間ができるという効果があるはずだが、その効果は薄いのではないかというのが日教組の判断だ」と説明した。
また、法案で「新たな職」として位置付けられている「主務教諭」については、「主幹教諭と同様に、自治体で置くかを判断する確認が必要だ。業務量が今より増えることはあってはならないが、具体的な職務の中身はまだ案も示されていない。文科省が示す職務の中身によって、自治体の判断に影響する可能性もあるので、どういうものを考えているのかは説明が必要だ」と話した。
現在、日教組ではインターネット上で学校現場の意見を募集しており、ここで寄せられた意見を国会での議論に届けていくため、街宣行動やアピール集会を定期的に行っていく。
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給特法 公立学校の教員の職務や勤務の特殊性に基づき、給与や労働条件の特例を定めている法律。この法律によって、公立学校の教員は給与に教職調整額を上乗せして支給する代わりに、時間外勤務手当(残業代)は支払わないとされ、長時間労働に歯止めがかからない一因になっているという指摘がある。
教科担任制 教科ごとにその教科の指導を行う専門の教員が授業を行う制度。日本では小学校は学級担任制、中学校や高校が教科担任制だったが、近年、一部の教科、学年で教育の質の向上や学級担任の空き時間を確保するなどの狙いから、小学校でも教科担任制が導入されている。