大学入試の「女子枠」 高校生の過半数が賛成も「アピール不足」

大学入試の「女子枠」 高校生の過半数が賛成も「アピール不足」
iStock.com/metamorworks
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 理工系学部を中心に導入が相次ぐ大学入試の「女子枠」。女子に限定した定員を設ける入試制度の取り組みについて、学校法人河合塾が高校生を対象にアンケート調査を行った結果、過半数を超える56.0%が「賛成」としながらも、2023年に実施した前回調査の64.7%に比べ約9ポイント減少したことが、このほど分かった。高校生からの支持が低下したことついて、同塾は「女子枠の掲げる理念や狙いが当事者である高校生に十分に伝わっていない」として、導入の際には「より丁寧な説明が求められる」と注意を促している。

 今回の調査は24年11~12月に、全国の高校1・2年生を対象にオンラインで実施。3762件の回答を得た。

 調査結果によれば「工学部など女子比率の少ない学部に女子枠を導入する取り組みをどう受け止めますか」との質問に対し、高校生の56.0%が「賛成」、44.0%が「反対」と回答。女子枠を支持する回答が多数を占める一方、23年1月の前回調査に比べ「賛成」は約9ポイント減少した。

 理由を見ると、「賛成」と答えた高校生では「視点」「活躍」「多様」の言葉が目立った。具体的には「女性が増えることで男性とは違う視点を加えられるのではないか」(高2)、「多角的な視点を取り入れるため必要」(高2)、「固定観念によって能力の高い女性が活躍できなくなってしまうのはもったいない」(高1)――といった意見があった。

 一方、「反対」と答えた高校生では「平等」「差別」「公平」の言葉が多かった。理由としては「冷遇することも優遇することも男女平等に反しているのではないか」(高1)、「単に女子の入学をしやすくするだけでは不平等につながり、理系に進む女子が少ない根本的な原因がなくなるわけではない」(高2)「他の性別を差別していると捉えられかねない行為で、反感が大きい」(高2)――などの声が上がった。

 大学入試の「女子枠」の取り組みは、24年度の東京工業大(現・東京科学大)での導入を契機に全国で拡大。文部科学省によれば、25年度入試で理工系学部に「女子枠」を設けた国公立大は30校に上る。

 今回の調査結果を受け、同塾の近藤治主席研究員は「心情的に男女差別や不平等感を感じる生徒が多いようだが、さまざまなバイアスにより女子が進学しづらかった学部を受験しやすい環境を作った点で、女子枠には意義がある」と指摘。入試形式にばかり着目するのではなく、「入学後や卒業後も含めた総合的なメリットをもっとアピールする必要がある」と強調した。

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