複数校「統括校長」案も 学校の適正規模・配置検討へ有識者会議

複数校「統括校長」案も 学校の適正規模・配置検討へ有識者会議
学校の適正規模の在り方などを巡り議論した有識者会議=オンラインで取材
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 少子高齢化が進む中、学校の適正規模や適正配置の在り方について検討する文部科学省の有識者会議が発足し、3月5日、同省で初会合が開かれた。人口減少・少子化により全国各地で学校の統廃合が課題となる中、弾力的な学校配置を可能とする仕組みづくりや学校存立につながる工夫などについて、約1年がかりで検討を進める。初会合では2人の委員が発表し、「自治体が連携した『統括校長』の配置も考えられるのではないか」「住民が主体となるよう成長を促すことが必要だ」といった意見が出された。

 公立小中学校の適正規模や適正配置を巡って同省は2015年に手引を作成しているが、その後の急速な少子化やICT技術の進化などの情勢変化を踏まえ、手引の改訂も視野に入れて有識者会議が設置された。初めに同省担当者が児童生徒数の減少で公立小学校の約4割、公立中学校の約5割が学校教育法施行規則で定める標準規模に達していない状況にあることに触れながら、「学校は地域コミュニティーの核の役割もあり、総合的に勘案して統廃合も小規模校の存続も、設置者が判断する必要がある」と同省の方針などを説明、委員に意見を求めた。

 続いて10年前の手引作成に関わった貞広斎子座長(千葉大学副学長・教育学部教授)らが意見を発表した。貞広座長は「学校の統合では生徒指導上の課題が深刻化しないよう、小規模校を残す場合は子どものコミュニケーションの多様性が損なわれたり教員負担が過重になったりしないよう、学校間連携の仕組みや人員配置も含めて具体的支援を強める必要がある」と強調。

 小規模校を残すときに弱体化を防ぐ観点から、複数の学校や自治体間のネットワーキングを進めてパワーアップを図る方策を示し、一つのアイデアとして「自治体が連携して、例えば『統括校長』のような方が中学校1校と小学校4校をマネジメントして、地域社会で支えていくことも考えられるのではないか」と提案した。

 丹間康仁委員(筑波大学人間系准教授)は、少子化が進む一方で高齢者の割合が増える中、社会教育領域を視野に入れて学校の適正規模や適正配置を考えるべきだと指摘した。また、島根県のある地域では、当初、学校統合に反対した住民がUIターン定住促進活動を展開して地域づくりを進めたという事例を挙げ、「学校統廃合を機に住民の問題意識を醸成し、地域づくりの主体へと成長を促すことが必要だ。単に統廃合反対や小規模校を残してほしいと行政にお願いする地域では、存続が難しいのではないか」と語り、住民が学びながら地域の学校の在り方を巡る議論に参画することの重要性を強調した。

 この後、2人の発表を踏まえて各委員が意見を述べた。牧野光朗委員(追手門学院大学地域創造学部教授、前長野県飯田市長)は「学校教育からだけ見て適正規模や配置を考えるのは厳しく、自治体や生活圏、経済圏全体で考えた方がいいこともある。ただし、文科省が予算を付けて地元に連携を求めるだけでは解決は難しく、連携をつくるプロセスにも文科省が伴走支援する必要がある」と述べ、適正規模・適正配置を進める上で国のコミットも強化すべきとの考えを示した。

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