中教審の「社会教育の在り方に関する特別部会」の第6回会議が3月6日、文部科学省でオンラインを併用して開かれ、大学生の東琴乃臨時委員(喜入マナビバプロジェクトつわぶき代表)が、若者の社会教育参画へ向けた意見を発表した。この中で東さんは、高校の「総合的な探究の時間」や社会教育に関わる大人との出会いを通して社会教育に関心を持った経験を語り、「若者の社会教育参画を進めるためには、社会教育人材と出会う機会づくりや高校の総合的な探究の時間との連携、中高生が行動できる環境づくりが必要だと思う」と提案した。
東さんは、鹿児島市喜入地域を中心に、無料開放型自習室の開設や天体観測会などのイベントを通して、小中高生の学びをサポートする同団体の代表を務めている。東さんは初めに高校の「総合的な探究の時間」で地域活動に取り組む人にインタビューしたことをきっかけに社会教育に興味を持ち、コロナ禍に中高生が自習できる場をつくりたいとの思いから、2021年に団体を設立した経緯を語った。公民館から場所を借りられない苦労に直面しつつ、地域活動に取り組む中で国立青少年自然の家の職員と出会ったことが社会教育との出合いだったと振り返り、「これがなければ社会教育を知らないままだったかもしれない。若者が参画する上で、社会教育士などと出会う機会は大切だと思う」と述べた。
また、社会教育士は、ファシリテーション能力、プレゼン能力、コーディネート能力という、「探究の時間」のサポートに必要な3つの専門性を習得しているとして、「探究の時間が調べ学習で終わってしまうという課題を感じる教員もいるが、社会教育士が入ることで生徒に寄り添い、学びの面白さをより伝えられるのではないか」と提案。困っている学校に社会教育士が入りやすい環境づくりも必要ではないかと問題提起した。
さらに小学校ではこども会活動があるが、中学校に進むと地域とのつながりが減るという課題を挙げ、「中高生が活動するときにさまざまな障壁があるが、一緒に乗り越える存在が社会教育職員であってほしい。行政職員なら保護者も安心できるので、若者の伴走者として、中高生自身が行動できる環境づくりを考えてほしい」と提案した。
東さんの発表に対して各委員が意見や感想を述べた。関福生臨時委員(愛媛県新居浜市教委生涯学習センター所長)は「東さんの活動の広がりに力強さを感じた。公民館に行っても自学・自習の場をなかなか貸してもらえないケースは全国にあると思うが、東さんのような取り組みがこうした場を通じて全国につながっていくといいと感じた」と語った。
安齋宏之臨時委員(ふくしま学校と地域の未来研究所代表)は「若者が社会教育とつながる最初の接点として、コミュニティ・スクールで地域の人と関わることがきっかけになることが多い。高校がもっとコミュニティ・スクールを導入することで探究の時間も充実すると期待できるし、若者がより社会教育に触れることになると感じている」と話した。
牧野篤臨時委員(東京大学大学院教育学研究科教授)は「出会う機会や自由、信頼できる大人など、いくつかキーワードがあった。話を聞いて、自由とは好き勝手にやることではなくて、伴走支援や信頼といった良い人間関係があることでやりたいことができる、それが本当の自由だと言いたいのかと思った。社会教育を考える上で大事なことであり、そういった社会づくりをしなければいけないと感じた」と述べた。