教員の処遇改善を盛り込んだ給特法改正案を巡り、国会での議論が始まるのに合わせて、学校現場の厳しい実態を伝えようと、日本教職員組合(日教組)の集会が3月18日、衆議院第二議員会館で開かれた。この中では山梨県の教員が、同県で導入されている小学校の25人学級について「PTAや市町村教委など教育5者で勝ち取った大きな成果だ」と強調し、行政と連携しながら制度の改善に努めている状況などが報告された。
この集会は日教組が、学校現場の実態を伝える「『今、学校が大ピンチ!』現場の声を届けよう! キャンペーン」の一環としてシリーズで開いているもので、2月に続いて2回目。今回は「教職員定数増を!」をテーマに、山梨県の小学校教員と神奈川県の組合役員が登壇した。
初めに丹野久中央執行副委員長が「不登校は小中高を合わせて41万人を超えており、学校が子どもたちの当然の居場所になっていないのでないかと強い危機感を持っている。学校は安全安心を大前提に豊かな学びと巣立ちを保障する場でないといけないが、予算拡充を伴わない教育政策や働き方改革の遅延などでピンチに追い込まれており、改善に向けて実態の共有とともに皆さんの考えをしっかり拡散してほしい」とあいさつした。
山梨県の小学校教員の内藤陽介さんは、同県で2021年度から段階的に導入されている小学校の「25人学級」の拡充について、「組合とPTAや校長会、教頭会の教育4者に加えて市町村教委を合わせた教育5者で勝ち取った大きな成果だ」と強調。「児童一人一人の授業中の発言機会が大幅に増えて自己肯定感向上につながり、教員も個に応じた指導をしやすくなった」などと教育環境の改善につながっていると述べた。
また、25人学級の編制に伴い教員不足は生じているものの、教師が確保できる最大限の範囲で学級編制が実施されている状況を説明し、「人が足りないからと諦めず行政と議論を交わしながら知恵を絞って前に進んでいる。教職の道が魅力ある仕事になるように進化・発展させたい」と述べた。
神奈川県高等学校教職員組合の佐藤治委員長は、同県教委が実施した教員の意識調査で、43%が「会計処理」に負担を感じていると挙げたことに触れて、「教員は授業の合間に生徒会費やPTA会費などの会計を業務として行っており、69%が外部人材の活用を求めている」と、働き方改革に向けて改善の必要性を指摘した。
また、在校等時間が多い教員ほど部活動に従事している比率が高いものの、約30%が「面倒なので勤務時間管理システムに入力していない」と答えている実態を挙げて、高校も含めた部活動の地域移行が必要だと強調した。さらに神奈川県単独でサポートスタッフの配置が進んでいるものの、多くは非常勤であるため常勤教員の負担増につながっていることも挙げて、「基本に立ち返って業務削減、定数改善、給特法の廃止という原点から真の働き方改革を進めたい」と訴えた。
日教組は4月8日に3回目の集会を予定しており、合わせて高校無償化をテーマにしたシンポジウムを開くことにしている。