不登校の児童生徒を受け入れる「学びの多様化学校」について、文部科学省は3月19日、来年度に開校する23校を新たに指定したと発表した。指定数としては過去最多で、全国の学びの多様化学校の数は、23都道府県で58校になる見通し。同省は将来的に全国300校の設置を目指しており、「自治体の設置準備を支援するなどして、さらに設置を促進したい」と話している。
学びの多様化学校は、2005年に「不登校特例校」として制度化され、23年に名称が「学びの多様化学校」に改められた。児童生徒の実態に配慮して柔軟に教育課程を編成することが認められており、始業時間を遅らせたり、自然環境などを生かした多様なカリキュラムが設けられたりしている。不登校の児童生徒が年々増える中、昨年4月には過去最多となる11校が開校したが、来年度は2倍以上の23校が開校することになった。
今回の指定により、学びの多様化学校は23都道府県で58校になる。このうち初めて設置される県は、秋田県、山形県、福島県、茨城県、千葉県、三重県、沖縄県の7県。学校種別の内訳は、小学校7校、中学校35校、小中一貫校5校、高校11校。設置形態別では、本校型22校、本校から分離して特別の教育課程に基づく校舎を設置する分校型5校、本校から分離して学級のみを置く分教室型22校、高校に特別のコースを置くコース指定型9校となる。
同省児童生徒課によると、新たに開校する学校では、小中学校の学び直しの強化や社会性を養うために新たな教科を新設する例が目立つという。
秋田県大仙市の秋田修英高校では「ステップUPコース」が開設され、コミュニケーション能力を養う「ソーシャルスキルトレーニング」やボランティア活動などに取り組む「地域協働」などの科目が設けられる。同校は「3年間を通して、生徒たちを自立の道に導きたい」と話している。
福岡県北九州市の慶成高校では「至誠コース」が設けられ、小中学校の学習内容を1年次にしっかり復習できる「国語基礎・数学基礎・英語基礎」を開設し、学び直しをした上で高校の内容の授業を履修する。
全国の小中学校の不登校の児童生徒数は、文科省の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査(2023年度)」によると、過去最多の約34万人に上っている。同省は27年度までに学びの多様化学校を全ての都道府県と政令市に少なくとも1校以上設置することを目指しており、将来的には全国に300校の設置を目標に掲げている。
同省は学びの多様化学校の設置準備や設置後の運営に補助金を出す事業を進めており、児童生徒課は「学びの多様化学校の必要性や有効性への理解は着実に深まっており、必要と感じる児童生徒が身近な場所で通えるよう、設置の増加に向けて自治体を支援したい」と話している。