自分たちが心地よく学べる環境ってどんなものだろう――。東京都三鷹市立第三小学校(山下裕司校長、児童737人)で3月21日、2024年度に5年生が総合的な学習の時間で取り組んできた「学びの環境デザインプロジェクト」の発表会が行われた。コクヨのプロトタイプ(試作品)の家具などを活用し、1人で集中して学ぶ時に最適な学習環境や、クラスで話し合う時に意見が出やすい学習環境など、それぞれのグループが目的別に考えた学びの環境デザインが発表された。
同校では自立した学び手を育てるために、学校全体でプロジェクト型学習やマイプラン学習、自由進度学習などに取り組んでいる。その際の学習環境も子どもたちに委ねてきたが、例えばオープンスペースの活用については、机を配置するなどして場所を選択することにとどまっていた。
そこで、子どもたちが場所だけでなく、家具などの学習環境を自己選択し、自分たちが心地よく学ぶ環境とはどういったものなのかを考えていくために、同校の5年生は昨年6月から総合的な学習の時間において、コクヨと協働した「学びの環境デザインプロジェクト」に取り組んできた。
L字型で組み合わせると長方形になる机や、縦にも横にも使える箱型の椅子、仕切りボードなど、コクヨのプロトタイプの家具と、もともと学校にある机や椅子なども組み合わせながら、子どもたちはグループごとに学習環境について考え、実際に試して検証を重ねてきた。
コクヨのワークプレイス事業本部の齋田清隆さんは「子どもたちと一緒に、学校向けの家具をつくっていきたいと考えている。高さが違ったり、机にも椅子にも使えたりするなど、子どもたちが自分で考えて使えるような家具をプロトタイプとして提供している」と説明する。
3月21日には、同プロジェクトの発表会が行われ、コクヨの齋田さん、小川真季さんを審査員に招いて、5年生の全グループがプレゼンを行った。審査は「内容の深さ」「実用性」「汎用(はんよう)性」の観点で採点され、決勝大会には8チームが進んだ。
例えば、クラスの問題や課題を子どもたち全員で話し合い、解決策を考えていく「クラス会議」など、みんなで話し合える場をプレイルームにつくりたいと考えたグループ。「全員がホワイトボードを見られて、一人一人が自分の意見を言えるような環境、司会が全員の目を見られるような環境をつくりたいと思った」と説明。高さの違うコクヨの机や、既存の学校の椅子なども使って、レイアウトを考えていた。
また、同校では探究型の学習が増えたことから「情報を収集したり、共有したりする場面が多く、探究型の学習ではほとんどがグループワークだ。静かで、意見を広げられるグループワークに特化した学習環境を考えた」と提案したグループや、5年生にアンケートを採り、50%以上が「個人学習のスペースがない」と回答したことから、壁沿いに仕切りを活用した個別学習スペースをつくったグループもあった。
さまざまな学習環境を考え、実際に使ってみた児童たちからは「学習環境はすごく大事なんだと改めて実感した」といった声が上がっていた。
最優秀賞に選ばれたのは、高学年になってフリープラン学習などが増えてきたことから、一人一人が落ち着く、集中できる学習環境を考えたチーム。コクヨの齋田さんは「最初に調査データを採り、そこから課題や目的を見つけ、自分たちで工夫をしていた。実際に使ってみると違っていたことを改善できていたのも素晴らしかった」と講評した。
今後、コクヨのプロトタイプの家具は、同校の子どもたちの意見なども踏まえて、商品化される予定だ。