少子化が進む中で学校の適正規模や適正配置の在り方について検討する、文部科学省の有識者会議の第2回会合が3月26日、同省で開かれ、3人の委員がそれぞれの分野で取り組んできた活動の成果などを発表した。この中で長野県飯田市長を4期務めた牧野光朗委員(追手門学院大学地域創造学部教授)は、地域に戻って子育てをしたいと思えるような教育を、高校を中心に進めることの重要性を指摘し、「人材を育てる上では、情報収集力などを高めるリテラシー教育に偏らず、パートナーを探して地域の課題解決に取り組む『連携力重視型人材』を育てる教育が必要だ」と強調した。
同会議は、人口減少・少子化に伴い全国各地で学校の統廃合が課題となる中、弾力的な学校配置を可能とする仕組みづくりや、学校存立につながる工夫などについて検討するために設置された。公立小中学校の適正規模や適正配置を巡って2015年に作成された手引の改訂も視野に入れて、議論が進められる。
同日は3人の委員がそれぞれの専門分野で取り組んできた活動の成果を発表した。この中で牧野委員は、学校の適正規模・配置は、地域ビジョンに照らし合わせて小中学校だけでなく幼稚園や保育所、高校など地域の教育機関が一体となって取り組む必要があり、特に高校3年間に故郷で子育てしたいと思えるような教育を進めることが重要だと述べた。
こうした考えをベースに飯田市では、市と高校、大学が連携して地域課題に取り組む「地域人教育」を進めていることを紹介し、こうした教育を通して生徒の地元への関心が高まった成果を述べた。また、これからの人材育成については、情報収集力などのリテラシー教育による人材では地域課題の解決につながらないとした上で、「むしろ自分にできないことを補うパートナーを探して課題解決に取り組める『連携力重視型人材』を育成することが重要だ。飯田市でも高校生の探究で課題解決に取り組んでおり、こうした人材を育てて地域に納得感を持ってもらえるような取り組みを進めてほしい」と同省に要望した。
猿田和孝委員(秋田県五城目町教育委員会生涯学習課主査)は、学校の改築にあたって同町が導入した「スクールトーク」の取り組みなどを紹介した。これは老朽化した学校の改築について全町民が参加できる意見聴取の場で、猿田委員は「回を重ねるうちに住民が学校とは何か、子どもたちをどう育てたいかに話が移っていった。公民館などと隣接する場所に学校を建てることになり、いろいろな学びができる場所になっている」と成果を報告した。
また、学校を住民に開放して社会教育講座を開いていると事例も紹介し、「公教育の外にあるものも学校に乗せて、学校と社会の在り方を考え、地域社会との距離の最適化を目指す必要があるのではないか」と述べた。
加藤崇英委員(茨城大学教育学部教授)は、各地の適正規模・配置の検討に参加した経験などを踏まえ、人口減少の速度が速く、小規模校の魅力化などにスピード感をもって取り組む必要があると指摘した。また、東北などの地方と大都市部では学校規模や適正配置の考えが異なることなどを踏まえながら、「すでに統廃合のタイミングが見定められていると思わざるを得ないケースもあるが、いずれにしてもこれから一層規模に応じた学校経営戦略と、それを支える施策が求められると思われる」と強調した。