保育所や幼稚園、学童保育(放課後児童クラブ)などの教育・保育施設での食事、おやつでの誤嚥(ごえん)事故防止のため、こども家庭庁と文部科学省はこのほど、自治体、教育委員会担当者に対し、使用を避けるべき食材を示した整理表、食事提供のポイントなどイラスト資料を提供した。食材整理表ではこれまでも注意が必要とされてきた食材を図示し、分かりやすくポイントを解説している。
食材整理表や食事提供のポイントなどのイラスト資料は教育・保育施設等における重大事故防止に関する事務連絡に添付されたもので、同日公表された「教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議」の2024年度版の年次報告に掲載された。既にある重大事故防止や発生時の対応を示したガイドラインに沿った内容で、有識者会議で指摘された内容も新たに加味されている。
食材整理表では、避けるべき食材として▽粘着性が高く飲み込みにくい「餅」「白玉団子」▽球形で大きさからも気道に入りやすく、詰まりやすい「乾いたナッツ・豆類」「ミニトマト」「ブドウ」「サクランボ」「個装チーズ」「ウズラの卵」「アメ類、ラムネ」▽弾力性があり、かみ切りにくい「イカ」「こんにゃく」――を具体的に挙げている。
調理を工夫する食材には、繊維が残り飲み込みにくい「薄切り肉」といったありふれた食材もあり、有識者会議で「保育現場でよく使われるが、注意が必要」として新たに加えられたものだ。
食事提供のポイントでは、無理に完食させたり、せかしたりすることが誤嚥事故につながる可能性があるといった注意点や正しい姿勢や水分摂取が事故防止に有効といった点が示されている。
このほか、情報共有のポイント、事故発生時の対応フローなどもイラスト資料で提供。節分、お月見、餅つきといった伝統行事に関する資料もある。豆、団子、餅による事故が少なからず発生しているとして見直しの検討を促し、節分での鬼打ち豆について「鬼退治の場面でいり大豆を使わずボールを使うなど工夫している施設もある」、お月見や餅つきでは「団子や餅を提供しなくても、飾りや遊びを通して風習・文化を学ぶことができる」といった注意点を示している。
こども家庭庁によると、23年度末から、教育・保育施設で園児・児童の入園や進級、職員の新規採用や入れ替わりがある4月を前に重大事故防止の徹底を図る事務連絡を出している。多くの職員がポイントを理解できるように、ガイドラインの内容を分かりやすく示すイラスト資料を加えているという。
今回も前年度とほぼ同様の内容で、死亡事故例があるうつぶせ寝への注意や誤嚥事故防止対策、KYT(危険予知トレーニング)の重要性などを強調。有識者会議の24年度版年次報告の指摘に沿った内容で、食材整理表など誤嚥事故防止のためのイラスト資料が新たに加わった。
24年度版年次報告では誤嚥事故防止への提言があり、園長ら施設長のマネジメント能力とともに全ての関係者の高い事故防止意識の必要性、食育とのバランスに考慮した対策の検討、データベースの充実などを提言している。
事故防止に向けた取り組みの徹底に関する事務連絡とイラスト資料は、こども家庭庁のウェブサイトから確認できる。