困窮世帯の保護者 約3割が卒業・入学準備を「借金で工面」

困窮世帯の保護者 約3割が卒業・入学準備を「借金で工面」
iStock.com/Ralf Geithe
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 経済的に困難な状況にある世帯の保護者のうち、およそ3人に1人が子どもの卒業・入学準備のため借金をしており、6割近くは生活費を削っていることが、公益社団法人「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」のアンケート調査でこのほど明らかになった。中でも費用の捻出が難しいものとして「パソコン・タブレット代」の伸びが目立ち、今春入学する新・中学1年生では約2割(前年比4ポイント増)、新・高校1年生では約6割(同9ポイント増)が負担の重さを訴える結果に。同法人では「授業料無償化だけでは支援が足りない実情が明らかになった」として、国や関係省庁らに対し、学用品の選択制導入や高校入学前の準備金創設などを提言している。

学校指定品の負担重く 6割近くが「他の生活費を削る」

 調査は2025年1月、同法人が行う25年度の「子ども給付金」を申請した全国の保護者・支援者に対し、オンライン上で実施。今年4月に入学する新・中1は982人、新・高1は1153人の計2135人の保護者から回答を得た。世帯別には離婚調停中で別居する「実質ひとり親世帯」を含め、「ひとり親世帯」が88%を占めた。

 子どもの卒業・新入学の準備に関し、費用の捻出が難しいものを複数回答で尋ねると、中高ともに「制服代」がトップ。新・中1では81.2%(前年比3.8ポイント増)、新・高1は77.2%(同1.4ポイント増)となり、22年の調査開始から高止まりが続いている。次いで運動着代(新・中1は63.0%、新・高1は49.9%)、学校用かばん代(新・中1は56.6%、新・高1は44.0%)――となり、学校指定品を挙げる保護者が多かった。

 加えて「パソコン・タブレット代」の用意が難しいと答えた保護者も増えており、新・中1の21.1%(同4ポイント増)に対し、新・高1は56.3%(同9ポイント増)に上り、より顕著な傾向にあった。

 文部科学省のGIGAスクール構想によって小中学校では1人1台のタブレット端末を配備する一方、高校については、同省の調査によれば24年5月時点で24都道府県・40市町村が保護者負担を原則としていることから、その影響が背景にあるとみられる。

 費用の捻出にあたっては複数回答で「他の生活費を削る」が新・中1は63・5%、新・高1は59.9%でいずれもトップ。親戚や友人からの借り入れをはじめ、クレジットカードのキャッシング、金融機関のカードローンなどで借金をすると答えた保護者は全体のおよそ3割に上り、新・高1でより割合が高かった。

 借金の金額は中高ともに「11万円以上」が最多。返済期間はいずれも「1年以上」の回答が多くを占めた。

 費用の捻出方法として「他の生活費を削る」と答えた保護者のうち、生活費削減のため71.3%が「親自身の食事量を減らしている」と回答。さらに▽冷暖房をあまりつけないようにしている 65.4%▽子どもの衣類・靴などを買う回数を減らした/買わなくなった 63.2%▽子どもへのお小遣いを減らしている/あげていない 54.9%▽おもちゃや本、ゲームなどを減らした/買わなくなった 44.0%――が続いた。

保護者負担の増加で「子どもの学びや成長に影響」

 これらの調査結果を受け、教育費の保護者負担に関する問題に詳しい千葉工業大学の福嶋尚子准教授は「卒業・入学時にかかる費用負担がますます重くなっている。親はもちろん、子どもの生活・学び全般に影響が広がり、子どもの成長発達や権利が制約されていることがあらためて明らかになった」と指摘。

 その上で、パソコン・タブレット代を負担と感じている保護者の増加について「新・高1で9.3ポイント増加した背景には、いくつかの自治体で、公立高校で使用するパソコン・タブレットを公費負担から私費負担に切り替えていることもあるだろう」と分析した。加えて、制服や学校指定品が市販品に比べ高額であるとして「子どもの権利保障の観点から校則見直しを推進した22年の生徒指導提要改訂を踏まえ、制服・指定品にまつわる校則・身だしなみ指導の在り方の再検討を各教育委員会が促していくことも必要ではないか」と強調した。

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