「デジタルとリアル融合」都立高で展開 東京都4年ぶり教育施策大綱

「デジタルとリアル融合」都立高で展開 東京都4年ぶり教育施策大綱
iStock.com/Peshkova
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 東京都は3月28日、次世代の学びの基盤を作るプロジェクトとして「LPX」(ラーニング・プラットフォーム・トランスフォーメーション)を掲げ、東京型教育モデルのバージョンアップを目指す「東京都教育施策大綱」を発表した。デジタルとリアルの融合による新たな教育スタイルを都立高校で展開する一方、「誰一人取り残さない」として、個々に合った学びの進め方やインクルーシブ教育の充実も図っていく。

 教育施策大綱は東京都の教育施策の基本方針となるもので、知事と教育委員会の協議を経て策定される。今回は2021年3月以来、4年ぶりの策定。2月12日~3月14日に都民から募ったパブリックコメントでは、258件の意見が寄せられた。

 小池百合子知事は「デジタルとリアルの最適な組み合わせによる新たな教育のスタイルを東京から展開していきたい。新たな大綱に基づき、教育委員会と一体となって子ども一人一人に寄り添った政策を展開する」としている。

 今回の大綱では、人口減少・少子高齢化とデジタルの急激な進展を大変革の時代と捉えた上で2050年代を見据え、将来の子どもたちについて「自らの個性や能力を伸ばし、さまざまな困難を乗り越え、人生を切り開いていくことができる」「他者への共感、思いやりを持つとともに、自己を確立し、多様な人々が共に生きる社会の実現に寄与する」といった姿を目指すための教育施策の方針を示した。

 東京都の目指す教育として、「誰一人取り残さず、全ての子どもが将来への希望を持って自ら伸び、育つ教育」を掲げ、子どもたちの意欲を高めることや社会とのつながり、学びの意義を実感できることが重要と捉え、自分に合った学習の進度、方法で学べることをポイントに挙げている。その実現に向けて、「子どもの意欲を引き出す学び」「社会全体の力を生かした学び」「ICT活用による学び」の3つを有機的に連携させ、教育スタイルの変革を目指す。

 ここで前面に打ち出しているのが、次世代の学びの基盤を作るプロジェクト「LPX」だ。

 具体的には「場所・時間」「学習内容・指導者」「学び方」「学習成果・評価」を変えていくといい、例えば、「場所・時間」では、学校外の専門機関との連携強化や民間事業者による多彩な講座など、学校だけでなく、外部機関やオンラインも含めた自分に合った時間割で学べるようにしていくという。

 「学習内容・指導者」では、教職員は学びの伴走者となり、専門家とも連携し、探究などの実践的な学びを展開。「学び方」では一人一人の知識、関心に応じた学びのための環境整備、「学習成果・評価」では子どもが学びのデータを活用してアセスメント、目標設定をし、自らの学びを創造するといった点がポイントとなる。

 また、大綱は優先的に取り組む事項として、①「新たな教育のスタイル」を都立高校から展開②デジタルを活用した学び方の転換③世界を舞台に活躍できる人材の育成④一人一人の子どもの状況に応じたきめ細かな教育の充実⑤インクルーシブな教育の推進⑥子どもたちの学びを支える教職員・学校の力の強化――の6点を掲げている。

 都立高校で展開する新たな教育スタイルとしては「デジタルとリアルを融合した学習者中心の新しい学び」を掲げ、具体的な施策例として、▽アントレプレナーシップなどの新たな科目▽先端的な学習支援システム導入▽学校外の専門機関との連携▽探究型の学びの推進――などを挙げている。

 このほか、デジタル活用の分野では、▽生成AIの活用促進▽デジタル教科書導入――といった施策例を挙げ、きめ細かな教育の充実については、▽スクールカウンセラーなど専門人材の充実▽不登校対応校内分教室「チャレンジクラス」拡大▽中学校35人学級――などを掲げている。「教職員・学校の力の強化」については、▽業務のアウトソーシング▽在校時間の見える化▽部活動の地域連携――など、BPX(ビジネス・プロセス・トランスフォーメーション)による業務効率化で、教職員の負担軽減を目指していく。

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