新学期に向けての学級づくり、授業づくりに役立つ講座を集めた「新学期スタートフェス2025 in TOKYO」(同フェス実行委主催)がこのほど、東京都中野区の宝仙学園小学校を会場に行われ、公立・私立の教員や大学生など80人以上が参加した。杉並区立済美養護学校の川上康則主任教諭は、発達につまずきがある子どもも輝くクラスにするために新学期に大切にしたいことを講演。「大人の笑顔は無言の承認。大人の機嫌は子どもの主体性の架け橋となる。笑顔と機嫌の良さをキープし、子どもたちに安心を伝えよう」とエールを送った。
川上主任教諭は「子どもたちにとっての一番のご褒美は、笑顔と機嫌の良さをキープできる大人が、いつもそこにいることだ」と話した。それにより、子どもたちは大人の顔色をうかがわなくて済み、ありのままの自分を肯定されている気持ちになり、学校や教室が気持ちよく過ごせる場になると説明した。
「大人の笑顔は無言の承認だ。そして、大人の機嫌は子どもの主体性への架け橋となる。この状況を作り出し、子どもたちに安心を伝えることが、どんな子どもも輝くクラスにするための一歩になる」
また、学校が安全基地となるためには、教員の「承認」が欠かせないとし、「子どもの育ちは、金平糖のイメージで捉えてほしい。大人から見て直したいとげを見るのではなく、プラス思考で余白や伸びしろを育てることが大事だ。ないものねだりよりも、あるもの探しをしてほしい」と訴え掛けた。
そして、教育や保育、子育ては「感情労働」だと述べ、「子どもの育ちに関わることは、感情の抑制や忍耐、緊張感が伴うもの。それ故に、毎日の気持ちの余白がとても重要だ」と強調した。
例えば、「学校とはこういうものだ」「○年生とはこういう姿だ」という、心の中にそれぞれがこれまでの経験から築き上げてきた姿がある。その枠から外れたり、はみ出したりする子がいると、教員は「正しい指導をしているのに、この子がかき乱す」と思えてしまうと説明。
「こうして気持ちの余白が奪われていく。余白が失われているときは、物事を早く解決したくなりがちだ。そういう時は意識して、せっかちに結果を求めないこと、『今はこういうもの』と捉えることで、余白を広げていくことができる」と述べた。
また「そもそも学校教育目標などに示される子ども像には、ネガティブな側面を許さない、認めない傾向が備わっている。『ねばならない』になった時から、子どもたちを追い詰める指導になっていく」と、教師のマルトリートメントについて指摘。
「大人の期待に沿うことを前提とする関わり方は、基本的に全部ダメ出しになる。指導の名のもとに、大人の都合を子どもたちに押し付けていることがないだろうか」と問い掛け、「『こうあるべき』の呪縛から抜け出すためには、『とらわれない、とらわれない』とつぶやいて、自分に言い聞かせよう」とアドバイスを送った。
白百合学園小学校の浜屋陽子教諭は、「教室が変わる言葉の力『ペップトーク』」をテーマに講演。
ペップトークは、米国のスポーツ界で選手を励ます言葉掛けとして始まった。浜屋教諭は、ペップトークのコツとして「捉え方変換」「あるもの承認」「してほしい承認」の3つを紹介。
例えば、「捉え方変換」については、「授業中にうるさい子がいたとする。その子をポジティブに捉えると、興味津々な子、発言力がある子となる。事実は一つでも、解釈は無数にある。いいように捉え方を変えていくようにしよう」と投げ掛けた。
また、「してほしい変換」について、教員は「廊下を走るな」「宿題を忘れるな」と、してほしくない言い方で言いがちだと指摘。「そうではなく、『Let’s』の言い方をしてみてほしい。『ミスしないでね』よりも『思いっきりやっておいで』と送り出してあげる。成功のイメージを持てるような言葉のチョイスをしてみてほしい」と強調した。