昨年春に首都圏の私立大学に入学した学生のうち、自宅外通学者の入学までにかかる費用は平均で約231万円に上り、過去最高を更新したことが、東京地区私立大学教職員組合連合が4月4日公表した「私立大学新入生の家計負担調査(2024年度)」の結果で分かった。宿泊費高騰など受験費の増加が全体額を押し上げた。同団体は学費の値上げや物価高騰で今後も学生の負担は増えるとみて、学費負担を軽減する制度や無利子奨学金の対象拡大などを国に求める署名運動を始めることにしている。
この調査は同団体が1985年度から毎年実施している。今回は昨年春に首都圏の私立大学(短大含む)9校に入学した新入生の家庭を対象に、昨年5月から7月にかけて行い、3910件の有効回答を得た。
調査結果によると、自宅外通学者の「受験から入学までの費用」は、▽受験費用 27万3800円(前年度より7.9%増)▽敷金・礼金 25万1700円(同0.8%増)▽初年度納付金 136万5281円(文科省の隔年調査を引用しているため前年度と同額)――など、合わせて231万4781円に上り、前年度より1万2600円(0.5%)増えて過去最高となった。首都圏の宿泊費の高騰で受験費用が2万円増えたことが、全体額を押し上げた。一方、自宅通学者の平均額は161万6981円で、前年度を6200円(0.4%)下回った。
自宅外通学者について、入学までの費用に「仕送り額(4~12月)」も加えた家庭の「入学の年にかかる費用」を聞いたところ、合わせて313万6481円となり、前年度より0.3%増えた。これは世帯平均年収の約3割を占める額で、大学にかかる費用が家計の大きな負担になっている状況が浮き彫りになった。
一方、毎月の仕送りの平均額は8万8500円で、平均家賃6万8900円を引いた生活費は1万9600円となり、1日当たりに換算すると653円だった。これは過去最高だった1990年度の2460円と比較すると約4分の1で、同団体は「食費や通信費などをこれで賄うのは不可能であり、学生が長時間アルバイトをせざるを得ない実態が表れている数字だ」と指摘している。
こうした学費などの入学費について借り入れを行った家庭の割合は14.7%で、平均借入額は過去最高の203万円に上った。一方で全体の約6割が日本学生支援機構などの奨学金を希望しているものの、「申請基準に合わない」「返済義務がある」などの理由から、実際に奨学金を申請した世帯は53.1%にとどまっていることが分かった。
また、アンケートの自由記述では、「最後(卒業)まで学費や仕送りを続けられるか不安な毎日を過ごしている」「体をこわして奨学金と年金のみが収入源で、常にお金を払えなくて学校をやめる日が来るかもしれないと不安でいっぱい」「私立理系の学費があまりに高く、びっくりした。国からのさらなる支援を切望する」などといった切実な声が寄せられた。
こうした結果について、記者会見した同団体の濱岡剛中央執行委員長は「学費などが親にとって大変重い負担になっていることを、切実に感じる。今後も学費の値上げなどでさらに家計負担は重くなると考えられ、国の方でぜひ対応してほしい」などと訴えた。
同団体は今回の結果を踏まえて、学費負担を大幅に軽減する制度の創設や修学支援新制度の対象の拡大、希望者全員が無利子奨学金を受給できるようにすることなどを求める署名運動を始め、今年秋ごろに国会に請願を提出することにしている。