休日の野球、女子バレーを地域移行 千葉・印西市が9月始動と公表

休日の野球、女子バレーを地域移行 千葉・印西市が9月始動と公表
説明会に登壇、自身の経験について語った大山さん=撮影:徳住亜希
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 千葉県印西市教育委員会は4月13日、同市内で開いた部活動の地域移行に関する全体説明会で、2026年9月から市内全中学校で休日の部活動を停止し、地域クラブに移行することを公表した。これに先立ち25年9月から、軟式野球部と女子バレーボール部の休日の活動について、新設する地域クラブへの移行を開始する。運営は部活動支援事業を行う「アーシャルデザイン」が担う。説明会では元女子バレーボール日本代表の大山加奈さんが講演し、「アスリートは弱音を吐けない環境にある」と話し、集まった指導者や保護者らに向けて「勝利至上主義に陥ることなく、スポーツを通し、どんな大人になってもらいたいかというところに目を向けていただきたい」と呼び掛けた。

 計画では、軟式野球と女子バレーボールの休日の活動について、今年9月6日から地域クラブに移行する。平日に部活動を行っている学校に軟式野球では市内3拠点、女子バレーボールでは同6拠点に、それぞれ地域クラブを設置。活動回数はクラブによって異なるが、26年8月30日までの1年間、40~80回を予定している。4~6月に指導者の募集を行い、5月からクラブへの参加申し込みを開始。7月以降、保護者らに向けた対象クラブの個別説明会も実施する。

 その上で26年9月以降、他の部活動についても活動を停止し、地域移行を本格始動させるとしている。同市教委の渡邉義規教育長は、先行して実施する2種目の地域移行を通して「課題の抽出分析を行い、次年度の本格実施に生かしていこうと考えている」と説明。26年度以降は全12種目・70クラブが設置される見通しだ。

 指導者は各クラブに2人ずつ配置。地域クラブの運営を行うアーシャルデザインの担当者によれば、指導者には兼職兼業を望む教員やスポーツ少年団などの指導者、保護者のうち、スポーツ指導の知見がある実技指導の経験者を想定しており、採用にあたり別途面談を実施するという。また、質を担保するため、指導員に対しハラスメント防止研修の受講のほか、日本部活指導研究協会による検定の取得を義務付けるとしている。

 各クラブへの指導者の配置に関連して、同市の担当者は教育新聞の取材に「市内の教職員へのアンケート調査では、7割が『土日は休むべき』との回答だった。その結果を踏まえ、地域移行にあたっては個別に声を掛け、指導を続けたい教職員については兼職兼業で参加していただく予定で進めている」と語った。

 さらに部活動の地域移行に向けた課題として、アーシャルデザインの小園翔太代表も「印西市だけに限らず、どの自治体も財源確保の問題が大きい」と述べ、「企業版ふるさと納税を活用したスキームを作るなどして、持続可能な運用体制を構築していく必要がある」と強調した。

 また、この日の説明会には元女子バレーボール日本代表の大山さんが登壇。勝利至上主義に陥り心身を病んだという自身の経験を踏まえ、「スポーツは本来、心身の健康を犠牲にしてやるものではなく、人生を豊かにするための一つのツールに過ぎない」と指摘し、自発的に創意工夫を凝らす「トライアンドエラーの過程に、子どもの学びや楽しさがある」と語った。

 加えて「日本代表の強烈なプレッシャーから逃げずに踏みとどまれたのは、私を肯定する両親や指導者の存在があったから。安心感がないと高い壁に向かっていくことはできない」として、保護者や指導者を含め「大人は子どもにとっての安全基地でいてあげてほしい」と訴えた。

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