部活動の地域移行後の負担を巡り激論 「最終まとめ素案」公表

部活動の地域移行後の負担を巡り激論 「最終まとめ素案」公表
最終とりまとめに向け山場を迎えた実行会議の3回目会合=撮影:徳住亜希
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 スポーツ庁・文化庁は4月17日、「地域スポーツ・文化芸術創造と部活動改革に関する実行会議」(座長:小路明善アサヒグループホールディングス取締役会長兼取締役会議長)の3回目会合を開き、同日公表された「最終とりまとめの素案」について議論した。素案では、地域移行後の費用負担の在り方を巡って、保護者にかかる受益者負担の水準について、自治体間で大きなばらつきが出ないよう国が金額の目安などを示す必要性を追記。また、次期学習指導要領での部活動の取り扱いに関し「地域クラブ活動の普及・定着を前提とした記載」としながらも、地域移行が難しいケースも想定されるとして「教職員等の負担軽減の視点から一定の記載を行うことが考えられる」ことが加えられた。

 部活動改革を巡っては、文部科学省は2023~25年度までの3年間を「改革推進期間」に設定、公立中学の休日の部活動について地域移行を進めている。推進期間後となる26年度以降の改革について、実行会議では昨年12月に公表された「中間とりまとめ」をもとに、「地域スポーツ活動」「文化・芸術活動」の各ワーキンググループで有識者による議論を重ねてきた。

 17日に示された素案では、地域移行から「地域展開」への名称変更、26~31年度の6年間を「改革実行期間」とするなど中間とりまとめの内容をおおむね踏襲。その上で改革の理念として、地域クラブ活動を通じ「医療・介護負担の軽減、健康寿命の延伸や経済の活性化など、より大きな社会課題の解決にも寄与し得る」との文言が新たに追加。さらに中学3年での部活動の「引退」にとどまらず、地域ぐるみで年齢や能力とは関係なく、誰もがスポーツや文化芸術活動に親しむ環境整備の必要性も明記した。

 また費用負担の在り方について、部活動指導員が学校の働き方改革の推進や質の高い指導実現に重要な役割を担っていることに加え、地域展開に向けた前段階の取り組みとしている自治体もあるとして、「次期改革期間においても一定の範囲で支援を行っていく必要がある」と強調。保護者にかかる受益者負担に関しては「自治体間で大きなばらつきが出ないようにするとともに、生徒の活動機会を保障する観点から、国において金額等の目安等を示すことを検討する必要がある」との方針を示した。

 受益者負担を巡っては各委員から意見が出され、「指導者への謝金やクラブ参加費も含め、持続可能なものになるよう努めてほしい」「保護者にかかる適切な負担割合や比率を示すことで、地域移行が円滑に進めやすくなるのではないか」「いわゆる過疎地で活動をするのと、東京で活動するのとではコストが異なる。受益者負担を一律にするのが平等なのか、コスト高を踏まえて設定するのが平等なのか」などの指摘が続出。座長からも「所得格差や地域格差によって不平等にならないことを優先して考える必要がある」との懸念が示された。これらの意見を受け、スポーツ庁の担当者は「政府による実態把握の調査や自治体への聞き取りを踏まえながら検討していく」と述べた。

 さらに素案では、学習指導要領での部活動の取り扱いについて、「平日についても地域クラブの指導者または部活動指導員が指導を担う体制を普及させていくことが重要」とし、さらに離島や山間部などを中心に、地域移行の実現が困難なため学校部活動を継続するケースも想定されるとして、そうした場合に「学校部活動に関しても教職員等の負担軽減の視点から一定の記載を行うことが考えられる」ことが新たに書き加えられた。今後、スポーツ庁・文化庁でさらなる検討や具体化を進めた上で「中教審に報告されることが期待される」として、次期改定に向けたプロセスについて言及した。

 両庁では、この会議での議論を踏まえ「最終とりまとめ案」を作成、5月開催予定の4回目となる実行会議で議論を行うとしている。

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