不払い残業開き直り法案だ 給特法改正案に反対の署名提出

不払い残業開き直り法案だ 給特法改正案に反対の署名提出
文科省の職員に署名を提出する有志のメンバーら=撮影:藤井孝良
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 国会で審議中の給特法改正案を巡り、教育学の研究者や現場の教員、弁護士らによる有志が4月21日、4万8000筆に迫る給特法改正案に反対する署名を文部科学省に提出した。有志のメンバーの一人で、岐阜県の公立高校教員の西村祐二さんは、現状月額給料の4%とされている教職調整額を段階的に10%まで上げていくこの法案では、公立学校の教員の長時間労働の実態とかけ離れた状態が温存されるとして「不払い残業開き直り法案だ」と批判した。

 有志では、3月7日から給特法改正法案に反対する署名を開始し、衆院文部科学委員会で法案の審議が始まったのを受け、第一次取りまとめ分を主要政党と文科省に提出。4月20日時点でオンラインと紙の合計で4万7846筆の賛同が寄せられており、引き続き署名活動を展開する予定としている。

 有志のメンバーである本田由紀東京大学教授は「私たちが本当に憤っているのは、教職調整額を上げることが長時間労働の解消と直接つながっていないこと。これが法案の最大の問題点だ」と指摘。「教員が長時間労働で苦しんでいる中で調整額を上げたら『むしろ少し上げたのだからこれまで通り、あるいはこれまで以上にもっと長時間働け』という理屈に使われてしまいかねない。長時間労働の是正の議論が待遇改善の議論にすり替えられている」と警鐘を鳴らした。

 西村さんは4月10日の衆院本会議で、石破茂首相が給特法に関して「時間外在校等時間が月20時間程度に達するまで、幅広い観点から諸課題の整理を行う」と答弁したことを紹介し、「ある企業で月80時間の残業が生じているのに、残業代は月10時間分しか払われていない。ちゃんと払ってほしいと言ったら、企業側は残業が月20時間まで減ったら、残業代を払うかどうか検討しますと答えるようなもので、さっぱり意味が分からない」と、比喩を用いて政府の姿勢をただした。

 「今の法案のままだと不払い状態が続く。処遇改善を打ち出しているが、教職調整額を10%に上げたところで、本来残業代としてもらえる額の3分の1、4分の1ほどだ。切り下げられた理不尽な待遇が続くことは、やりがい搾取だと感じる。今の法案は不払い残業開き直り法案だ」と強調した。

 

【キーワード】

給特法 公立学校の教員の職務や勤務の特殊性に基づき、給料や労働条件の特例を定めている法律。この法律によって、公立学校の教員は給料に教職調整額を上乗せして支給する代わりに、時間外勤務手当(残業代)は支払わないとされ、長時間労働に歯止めがかからない一因になっているという指摘がある。

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