子どもへの性暴力防止へ 教育・保育関係者向け「横断指針」公表

子どもへの性暴力防止へ 教育・保育関係者向け「横断指針」公表
閣議後の記者会見に臨む三原担当相=撮影:水野拓昌
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 こども家庭庁は「教育・保育等を提供する事業者による児童対象性暴力等の防止等の取組を横断的に促進するための指針」(横断指針)を4月18日に公表した。子どもと接する従事者の性暴力防止策について、教育・保育関係事業者など業界横断的に広く活用できる事項を取りまとめたといい、三原じゅん子こども政策担当相は22日の閣議後会見で「各事業者にこの横断指針を積極的に活用していただきたいと考えている」と訴えた。

 横断指針は、子どもへの性暴力防止策を検討する事業者などが参考にできるポイントや取り組み事例をまとめた。教育・保育の所管行政、団体で作成されている既存の指針・ガイドラインに加え、有識者へのヒアリングや有識者検討会での意見などを踏まえ、90ページを超える内容。さらに、自治体や関連施設、団体の事例集などが参考資料として添えられている。2026年施行予定のこども性暴力防止法での対象事業者に限らず、子どもに教育・保育を提供する事業者に幅広く活用されることを想定している。

 三原担当相は22日、「こども性暴力防止法施行に先立ち、こども家庭庁の委託研究事業として、子どもへの性暴力防止策について業界横断的に広く活用できる事項を取りまとめた。(21日の)第1回こども性暴力防止法施行準備検討会では、この横断指針の内容も参考にしつつ同法に基づく義務の具体的内容について検討された。法の施行に向けては一層の議論を深めたい」と説明した。

 21日にガイドライン策定に向けて有識者の検討会で議論が始まった同法の「日本版DBS」で、対象事業者に義務化される安全確保措置(早期把握、相談、調査、保護・支援、研修)とも密接に関連する内容だ。ただ、横断指針は事業者に新たな義務を課すものではなく、事業者に義務付けるにはハードルの高い内容も含まれている。

 未然防止の観点からは、服務規定の記載事例として、「私的な連絡先でのやり取りが必要な場合も児童と1対1でやり取りせず、複数人で把握できる状況にする」「児童と私的な連絡先・SNSアカウントを交換しない」「私用スマートフォンや撮影可能機器を児童がいる場所で使用しない」「職場・事業所以外で私的に児童と会う約束をしない」「原則として密室内で1対1の状態にならない」「不必要に1対1になる状況で車に乗せない」「児童の送迎は管理職への報告をルール化する」「キャンプ、宿泊行事の引率は複数人とする」といったコミュニケーションなどに関わるルールの事例を紹介。「密室」「SNS」「1対1」への注意を促す内容が多い。

 施設・事業所の環境整備としては、死角をなくすことや巡回、監視システム、啓発強化を挙げる。死角解消策では「教室・部屋の内側から施錠できないようにする」「普段使われていない教室・部屋を施錠し、鍵を一元管理する」「建て替え、改修では廊下から教室・部屋が見えるようにする」といったルールの事例を記載。子ども・保護者への教育・啓発、従事者への研修の重要性も強調している。

 一方、被害が起きてしまった場合の早期発見や対応方法については、具体的な受け答え、配慮すべき事項を細かく記載。二次被害防止への配慮として、何度も同様の質問をされて被害を思い出すことによるトラウマ体験の深刻化、誘導的な質問が繰り返されることで記憶そのものが変化してしまう「記憶の汚染」といったリスクがあることを説明。警察、児童相談所、検察官が聴き取り方法について協議した上で、その代表者が聴き取りをする「代表者聴取」(協同面接)を紹介している。

 

【キーワード】

こども性暴力防止法 2024年6月に成立し、施行期限は26年12月25日。子どもと接する事業者が就業予定者、従事者の性犯罪歴を確認することを義務付けた「日本版DBS」を創設する。これらの事業者には子どもへの性暴力防止措置を講じる義務が課せられる。

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