過労や外国人児童にも影響 給特法の問題点を院内集会で訴え

過労や外国人児童にも影響 給特法の問題点を院内集会で訴え
給特法を巡る問題点を幅広く訴えた院内集会=オンラインで取材
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 給特法改正案の審議が国会で進む中、日本労働弁護団が4月22日、衆議院第二議員会館で同法案の問題点を訴える院内集会を開いた。この中では、弁護士や大学教授らがそれぞれの専門的な見地から、「教員の長時間労働是正につながらない」とする指摘をはじめ、「外国人児童らマイノリティーの子どもたちにも影響している」「過労死ラインを超えた教員が受けるべき産業医面接が、この法律によって受けなくてよいことにされてしまっている」などと同法の問題点を挙げた。

 日本労働弁護団は、給特法の廃止を訴え続けており、今年3月には改正案を巡り、「教員の長時間労働是正には給特法の廃止か抜本的な改正が必要不可欠だ」とする幹事長声明を出している。集会には同弁護団の弁護士や大学教授、給特法の審議に関わる国会議員らが参加した。

 初めに同弁護団で常任幹事を務める嶋﨑量弁護士が基調報告した。嶋﨑弁護士は改正案の問題点について、「問題なのは、給特法の枠組みでは自発的・自主的だと言って時間外勤務を労働とカウントしないものを残した上で、少し取り繕って手当を上げていること。これで効果が上がるわけがない」と指摘。その上で、「先生を増やすことも大事だが、これでは集まらない。本当に優れた方たちに教員を目指していただきたいと思うし、そのためにもきちんと枠組み自体を変えることに取り組んでほしい」と訴えた。

 名古屋大学の内田良教授は、文部科学省が実施してきた教員勤務実態調査の公表の仕方の問題点を指摘、「非常に正確なデータだが、持ち帰り仕事を含まない在校等時間で公表しており、持ち帰り仕事が『見える化』されていない。この時間を含めると、小中学校とも平均で過労死ラインを超える異常事態になっている」と強調した。また、今後の調査実施について同省が明言していないことについて、「この調査をなくすことはあり得ない選択であり、今後実施するとの言質を取ることで、働き方の未来は変わってくる」と集会に参加した議員らに呼び掛けた。

 日本女子大学の清水睦美教授は、30年間にわたって外国人の子どもたちの研究に取り組んできた経験から、教員の長時間労働や給特法を巡る問題が「マイノリティーの子どもたちに大きく影響している」と訴えた。具体的には、外国にルーツのある子どもたちのニーズを学ぶ学習に参加する教員が少なくなっていることや、学校単位の講演に呼ばれる回数も減っていることを挙げ、「メインの業務でないことで考えられなくなっているのかなと思う。長時間労働の見直しが進まない中で、マイノリティーの子どもへの理解が進んでいかないという状況が起きていると感じている」と危機感を語った。

 「過労死弁護団全国連絡会議」の代表幹事で、教員の過労死問題に取り組む松丸正弁護士は、教員の過労死が認定されても「熱血先生の美談」とされてしまっていたことに強い違和感を持ち、長時間勤務に従事させた責任を問う損害賠償訴訟に取り組んできた経験を語った。

 松丸弁護士はこうした裁判で、過労死や過労自殺のセーフティーネットであるべき産業医面接を発病前に受けていたケースが一例もなかったことを挙げ、「過労死ラインを超えたら産業医面接を実施しなければいけないことに、文科省通達でなっているのに、されていない。これには給特法のからくりがあり、『超勤4項目』に該当する時間が月80時間を超えなければ面接義務はないという非常識なことになっている」と説明。「私は給特法の問題を教員の心身の健康の問題として、しっかり見つめ直す必要があると思っている」と強調した。

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