公平で包摂的な幼児教育・保育 OECD白書踏まえシンポ

公平で包摂的な幼児教育・保育 OECD白書踏まえシンポ
白書のポイントを解説する小原OECD教育スキル局就学前・学校教育課長=オンラインで取材
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 世界的に重要性を増している幼児教育・保育を巡り、東京大学発達保育実践政策学センター(CEDEP)は4月18日、「公平で包摂的な幼児教育・保育の実現」をテーマにしたシンポジウムをオンラインで開いた。小原ベルファリゆりOECD教育スキル局就学前・学校教育課長が、1月に公表した「OECD幼児教育・保育白書第8部」について解説。小原課長は、日本が推進する「幼保小の架け橋プログラム」をはじめとする幼児教育・保育の施策の課題として、無償化されたにもかかわらず幼児教育・保育にアクセスできていない家庭の存在を挙げた。

 幼児教育・保育への政策的な投資による格差の縮小をテーマにした「OECD幼児教育・保育白書第8部」では、幼児教育・保育への参加は家庭の社会経済的な格差の影響が色濃く出ている現状を報告。この傾向は0~2歳に顕著なことや、28カ国中8カ国では、3~5歳の子どもの間で格差が広がっていることを指摘している。

 その上で、幼児教育・保育への政策的アプローチは、格差が拡大する前にその芽を摘むことにつながる可能性があり、将来的な補習教育や福祉サービスの負担を減らす効果があると強調。分析から見えてきた各国に共通の課題として①幼児教育・保育への参加の格差の縮小②子どもと幼児教育・保育の職員との意味あるやりとりの支援③全ての子どもにとっての包摂的な幼児教育の実現④幼児教育と家庭、学校、地域社会の接続⑤乳幼児期の政策のガバナンスと資金の改善――を挙げている。

 特に社会的不平等を軽減し、幼児教育・保育のメリットが長期にわたって持続するようにするためには、子どもとその保護者向けの社会サービスや保健サービスとの連携など、部門横断的なアプローチが不可欠だとし、その一つに、幼児教育・保育と初等教育以降の学校教育の接続の改善が必要だと強調。その好事例として、日本の「幼保小の架け橋プログラム」を紹介している。

 講演で小原課長は「幼児教育・保育と小学校レベルの学び、学校との連携も非常に重要になってくる。これは、幼児教育・保育で得られた成果が初等教育で失われないようにするためにも特に重要で、日本はこの点も非常に強化されている」と評価。

 幼保小接続では、幼児教育・保育と小学校で目標を共有すること、子どもの発達への包括的なアプローチを含むカリキュラムの連携、異なる教育段階にまたがる調整が鍵を握るとし、「幼児教育・保育が学校教育に向けて準備をするだけでなく、学校側も幼児教育・保育から子どもを受け入れるため、スムーズな移動を準備するための努力も必要だ」と、幼児教育・保育と小学校の双方向の対応が必要だと話した。

 また、小原課長は日本独自の強みと課題についても言及。強みとして日本では以前から子どもの全体的な発達を重視する教育的なアプローチが重視され、学校教育の質も高い水準を維持し、公平性も高い状態にあること、こども家庭庁の設立によって子どもに関する課題への調整機能が強化されていることを挙げた。一方で課題には、深刻な少子高齢化や子どものウェルビーイングへの懸念、幼児教育・保育への公平なアクセスの確保があるとした。

 この幼児教育・保育への公平なアクセスの確保について、小原課長は「日本は幼児教育・保育の普及度はかなり高いが、最後にまだアクセスに至っていない子ども、特に社会経済的に恵まれていない家庭の子どもへのサポートが課題になると思われる」と説明した。

 

【キーワード】

幼保小の架け橋プログラム 義務教育が始まる前後の5歳児から小学1年生までの約2年間を「架け橋期」と位置付け、0~18歳の学びの連続性に配慮しつつ、全ての子どもに学びや生活の基盤を育むことを目指し、幼稚園、保育所と小学校の円滑な接続と連携を推進していく国の施策。

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