「行政の越権行為」「教員の裁量大切」 給特法巡り参考人

「行政の越権行為」「教員の裁量大切」 給特法巡り参考人
給特法を巡る運用について意見を述べる髙橋准教授=衆院インターネット中継より
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 教員の処遇改善などに向けた給特法改正案を審議する衆院文部科学委員会が4月25日開かれ、学者や労働組合の代表者など、改正案に賛否両方の立場から4人が参考人として意見を述べた。このうち大阪大学大学院人間科学研究科の髙橋哲准教授は、給特法を巡る運用について、「いわゆる超勤4項目以外の業務を自発的に行った時間が労働時間には含まれないとの判断は、行政の範囲を超えており、この越権行為が教師の過労死直前状態まで働く労働環境を生み出している」と指摘、時間外勤務を労働時間として認めることが必要と訴えた。

 衆院文科委に参考人として出席したのは、髙橋准教授のほか、戸ヶ﨑勤・埼玉県戸田市教育長と梶原貴・日本教職員組合中央執行委員長、渡辺陽平・全日本教職員連盟委員長で、それぞれ約15分間ずつ意見を述べた。

 このうち髙橋准教授は、教員の労働時間の捉え方を巡る給特法の問題点を訴えた。同法が教員の時間外勤務の対象業務をいわゆる超勤4項目に限定しているルールを取り上げ、「本来なら超勤4項目以外の時間外勤務が発生した時点で、労働基準法違反に当たるはずだが、違法性が問われないのは文部科学省の所業によるもの」と指摘。同省が使用者の指示がなければ教員の自発的行為であり、労働時間には該当しないとしているためだと説明した。

 しかし、こうした運用は厚労省のガイドラインや授業準備などを労働時間と見なした裁判の判例から、「行政の範囲を超えた労働基準法の書き換えであり、この越権行為が教師の過労死直前の状態で働く労働環境を生み出し、全国的な教員不足を招く要因を作り出している」と指摘。 「実際に発生している教員の時間外勤務を労働基準法上の労働時間として認めること、これが働き方改革の一丁目一番地であることを、研究者の立場から強く指摘したい」と強調した。

 中教審の「質の高い教師の確保特別部会」委員も務めた戸ヶ﨑教育長は、改正案に賛成の立場から意見を述べた。この中で、戸ヶ﨑教育長は、教職は子どもの状況に応じて臨機応変に対応する能力が求められ、自発性や創造性に委ねる部分が大きいとし、「日々の教師の業務が、どこまでが職務でどこからが職務ではないという精緻に切り分けて考えることは極めて難しい。教師の裁量を大切にする給特法の精神は維持すべきと考えている」と述べた。

 また、勤務時間外の業務に時間外勤務手当を支給すべきとの意見については、「学校運営上の混乱を招くことを懸念する」と指摘。「時間外勤務の管理を管理職がこと細かに指示することになれば、違和感や抵抗感を覚える教師も少なくないと思う。その混乱を見れば、大変深刻となっている管理職のなり手もますます減少することも明らかだと思う」と否定的な意見を述べた。

 梶原中央執行委員長は教員の置かれている現状について、「学校現場は校内暴力、貧困、虐待、不登校と社会の課題を全て引き受けてきた一方、国の定数改善計画が止まったまま人はなかなか増えず、加配教員の配置は子どもの数や課題の数に比較してあまりにも少数だった」と強調した。

 その上で現場が欲しているものとして、業務削減と定数改善、給特法の廃止か抜本的見直しの3つを挙げ、「今回の改正案は教員の処遇改善としても長時間労働是正としても不十分で、このままでは業務削減や定数改善は大きく進まないのではないか。教員の働き方に影響を与える給特法の廃止に向けて、速やかに議論すべきだ」と訴えた。

 渡辺委員長は、学校現場で不登校や特別な支援が必要な児童生徒が増加し、学校や教師が対応する課題が複雑化・困難化していると訴え、持続可能な学校現場とするために、「学校における働き方改革と指導運営体制の充実、教師の処遇改善を一体的に進める必要があり、3つの大きな柱で全体として考えてほしい」と要望した。

 その上で、改正案に教育委員会による学校の働き方改革に関する計画の策定や公表が盛り込まれている点などを評価し、「本法案は働き方改革、組織的な学校運営、処遇改善を一体的に進めるために不可欠なものであり、成立はわれわれの悲願である」と期待を述べた。

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