将来のこどもの死亡を減らす こどもの死亡検証制度の在り方検討

将来のこどもの死亡を減らす こどもの死亡検証制度の在り方検討
こどもの死亡検証制度の在り方を考える検討会の初会合=撮影:松井聡美
【協賛企画】
広 告

 未来の防ぎうるこどもの死亡を少しでも減らすため、こども家庭庁は4月25日、「CDR(Child Death Review:こどもの死亡検証)の制度のあり方に関する検討会」の初会合を開催した。今後は遺族からの同意取得の在り方や、虐待・保育事故などの他の検証制度とのすみ分けなどについて議論し、全国展開に向けた具体的な制度の在り方について検討を進めていく。

 CDRは医療機関や警察、消防、学校、行政関係者など、複数の機関・専門家が連携して、亡くなったこどもの事例を検証し、予防策を提言する取り組み。効果的な予防策を導き出すことで、将来のこどもの死亡を少しでも減らすことや、こどもが安全・安心に暮らせる社会の実現などを目的としている。

 厚労省の人口動態調査における過去30年のこどもの上位死因の推移によると、5~9歳の死因では、心疾患の割合が最も高いが、10~14歳、15~19歳では自殺の割合が最も高くなっている。

 CDRは米国や英国などの諸外国でも類似の取り組みが導入されており、日本でも研究事業として2016年以降から検討が進められてきた。

 法令での対応としては、18年の「成育基本法」と19年の「死因究明等推進基本法」の成立を受け、こどもの死亡原因に関する情報の収集・管理体制の整備が国の方針として明示された。また、昨年の骨太方針にも、予防のためのこどもの死亡検証(CDR)を推進することが盛り込まれている。

 体制整備に向けた検討では、20年度から複数の都道府県で「予防のためのこどもの死亡検証体制整備モデル事業」を実施。22年度には、北海道、福島県、群馬県など8自治体でモデル事業が実施され、睡眠時の事故対策、交通事故対策、水難事故対策、自殺防止の予防策を提示するなどの成果があった。

 一方、不適切な養育が疑われる死亡事例で親の同意が得られにくいことや、警察から捜査中事例の情報提供がないために十分な検証が難しいこと、CDRの認知が不十分で周囲の関係者の理解が乏しく、必要な情報が得られにくいことなどの課題も浮かび上がってきた。

 今後、同検討会では、CDRに関するこれまでの取り組みから課題を抽出し、整理した上で、有識者や自治体関係者などからのヒアリングを重ね、全国展開に向けた具体的な制度の在り方について検討を進めていく。26年中をめどに取りまとめる予定としている。

 同検討会の座長に選出された山縣然太朗座長(国立成育医療研究センター成育こどもシンクタンク副所長、山梨大学大学院附属出生コホート研究センター特任教授)は「ご遺族に寄り添いながら、亡くなったお子さんたちからの学びを未来あるこどもたちの健やかな育ちに生かしていくために、CDRモデル事業の経験や既存の法令との関係などを十分に検討した上で、実効性のある、効果的な予防策を提言していく」と強調した。

広 告
広 告