理論と実践を相互に結ぶ 教員の学び直しの仕組みを議論

理論と実践を相互に結ぶ 教員の学び直しの仕組みを議論
教員・教員志望者の学び直しについて議論した教員養成部会の会合=オンラインで取材
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 社会の変化や次期学習指導要領を踏まえた教員養成を検討している中教審の教員養成部会は5月7日、第149回会合を開き、教員・教員志望の学生の学び直しをテーマに議論した。勝野正章東京大学教授が修士課程などの学士課程を超えた学びの支援について、山中謙司北海道教育大学旭川校准教授がCBT(コンピューター使用型調査、Computer Based Testing)による教育実践力の向上について発表。理論と実践を相互に結び付ける学びの重要性が浮かび上がった。

 勝野教授は、自身もメンバーとして関わっていた日本教師教育学会がまとめた「今後の教師教育の『グランドデザイン』」に沿って報告。勝野教授はグランドデザインの基本理念の一つに、学士課程を超えたさらなる学びが位置付けられていることに触れ、「具体的には学士課程プラス大学院修士レベルの教員養成となるが、これも一律の学び方やキャリア形成を想定するのではなく、まさに学びたいときに学びたいことが学べることを重視した形での多様性を、キー概念に据えている」と説明した。

 その上で、多様性として、学士課程修了後にすぐに大学院に進学する場合や、現職の教員が修士レベルの講義・演習・実習などを受講して必要な単位を取得すること、科目等履修制度の利用で社会人にも広く機会を開放することを挙げ、その実現のためには、経済的な負担の軽減や「有給研究休暇(サバティカル・リーブ」の制度化などによって、現職の教員や教職志望の社会人も含めて、安心して学べる条件整備が必要だとした。

 さらに勝野教授は、学士課程を超えたさらなる学びは、多様性と同時に共通性も重要だとし、特に大学院修士レベルの学びでは、学術研究を含め多様なものの中から自主的に選択することを保証する一方で、共通性として「教育臨床研究」を位置付けるべきだとした。

 こうした学士課程を超えたさらなる学びについて戸ヶ﨑勤委員(埼玉県戸田市教育長)は「学びたいときに学びたいことが学べるというのは非常に重要なことで、そうした社会に向けてユニバーサルな環境整備を進めていくことが大変重要だと再認識した」と話した。

 山中准教授は、北海道教育大で導入している「教育実践力向上CBT」のシステムを紹介。教育実践力向上CBTは、教育実習前に最低限知っておくべき知識を身に付ける基礎編、教育実習後に取り組み、教育実習の学びをさらに深め、教員採用試験の対策にも対応した応用編、学校現場での実践力を向上する発展編で、合わせて1000を超える問題を収載しており、4年間の学修を通じて活用している。

 教育実践力向上CBTの有効性について、山中准教授はテストとしての側面と同時にトレーニングとしての側面があることを強調。実際の授業では、CBTの問題を基に自分自身の教育実習での対応を振り返る活動もあるとし、「これによって実習のときは無意識だった自分自身の行動や観察した指導教員の対応というのが、理論や授業観に裏打ちされた価値のある行為であったということに気付く」と強調。他の学修への主体的・能動的な学びにつながると強調した。

 この教育実践力向上CBTについて、橋本雅博委員(住友生命保険相互会社取締役会長、経団連教育・大学改革推進委員長)は「実社会で経験を持った人が教育現場に参入していくためにも、このプログラムは大変重要なステップになり得るのではないかという感触を持った。このプログラムを受けることで、指導力への自信や教職への意欲を高めるという意味でも役に立つのではないか」と評価した。

 

【キーワード】

CBT コンピューターを使用した試験方式。動画や音声など、紙のテストではできないコンテンツを活用した出題ができたり、解答状況によって次に出す問題を変えたりすることが可能で、解答データの集計や分析も紙に比べて早く処理することができるため、さまざまな試験で活用の可能性が模索されている。

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