大学教授や塾主催者など、教育関係の仕事に携わるトップランナーとの対話を通して高校生に「学び」について考えてもらおうというイベントが5月8日、参議院議員会館で開かれた。首都圏からオンラインも含めて約50人の高校生が参加し、パネルディスカッションや交流を通して、パネリストから高校時代に考えてほしい学びの姿などについてアドバイスが送られた。
「未来トークCOLLEGE」と題して開かれた同イベントは、高校生に主体的に学ぶことについて考えてもらおうと、「外苑ソーシャルアカデミー」など複数の教育関係団体が主催。トップランナーとして、日本大学文理学部教育学科教授の末冨芳さんや、選択式フリースクール「いもいも」主宰の井本陽久さん、㈱LX DESIGN取締役の竹中紳治さんらがパネリストとして登壇した。
初めに各パネリストは、高校時代をどう過ごしたかなどをそれぞれ紹介。末冨さんは、世界史が好きだったが授業を聞かずに自分でノートを作って学んだ経験などを語り、「自分が先生を育てる立場になると、やりづらい生徒だったと思う。ちょっとごめんねと思う」などと話し、会場の笑いを誘った。
続いて「学び」について幅広く意見が交わされた後、高校生にアドバイスが送られた。高校時代と社会人の学びの違いについて、末冨さんは「研究者になると結果を出すまでのインターバルが短く、プレッシャーも強いが、高校のときは一番研ぎ澄まされており、インプットして目標に向かうインターバルが長い。あれこれ悩みながら学ぶことの良さを味わえる時間があり、そうした気持ちを大事に過ごしてほしい」と話した。
竹中さんは「大人になるとアウトプットの連続で、その間にインプットしないといけないので、すごい勢いで学ばなければいけない。高校ではインプットについてお品書きがあり、アウトプットするテストがあるが、大人はどんなアウトプットをしたいかから逆算して、インプットを考える違いがある」と、社会に出てからの学びの違いを説明した。
井本さんは「学校では与えられた知識で正解を出すトレーニングをしているが、世の中は不確実かつ複雑で、どんな頭のいい人でも試行錯誤するしかなくなる。思考の枠組みから飛び出て自分は何者であるかを考えることが必要になるし、学ぶことが生きることになる」と話し、最後に「将来に期待して冒険心をもってチャレンジしてほしい」とエールを送った。
この後、参加者は各パネリストを囲む形で小グループに分かれて対話し、高校生から「教育の多様化と言われるが、どんな学びの仕組みが必要だと考えるか」「学びたいことを見つけるために、どうすべきか」などと率直な質問が投げ掛けられ、パネリストが丁寧に答えていた。
イベントに参加した高校3年の男子生徒は「大学受験では何となく社会に役立ちそうという動機で法学部を志望しているが、話を聞いて自分の中で本当に学びたい理由を見つけることができた気がする。法律が何のためにあるのかなど、深くしっかり学びたいと思った」と話した。
また、高校2年の女子生徒は「自分は人と競争したり比べたりすることが苦手で、将来に不安を感じることが大きかったけれど、自分のワクワクを大切にすることの重要さを教えられ、将来に対して楽しみを感じることができるようになったと思う」と語った。