水泳部のいじめが原因 大阪市、中3自死で第三者委が報告

水泳部のいじめが原因 大阪市、中3自死で第三者委が報告
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 2023年8月に大阪市立中学校で起きた3年生の男子生徒の自死について、いじめ防止対策推進法の重大事態に基づき調査を行っていた第三者委員会は5月12日、水泳部でのいじめが自死に至った最大の要因であるとする調査報告書を市教委に提出した。部活動が行われる中で人間関係が固定化され、いじめが深刻化していった状況が浮かび上がった。部活動でのいじめの把握に課題があったことについて、阿部俊子文科相は同13日の閣議後会見で「部活動を地域展開した場合にもいじめの発見、対応が適切になされることが重要だ」と述べた。

 報告書によると、亡くなった生徒は1年生の頃から水泳部内で同級生の男子部員から「女たらし」などと言われ、場の笑いを取ろうと特定の人物をからかう「いじり」や執拗(しつよう)に関わってくる「だるがらみ」などの行為を繰り返し受けていた。学年が上がるにつれてそれらの行為がエスカレートしていき、中学3年生の夏の大会が終わった後に行われた打ち上げでは、亡くなった生徒を意図的に排除しており、精神的なショックを与えた。

 水泳部に加えクラスで起きたことも含め、報告書は計45件を亡くなった生徒に対するいじめと認定。自死に至ったのは、水泳部内のいじめが最大の要因であるとと考えるのが合理的だと結論付けた。

 また、水泳部の顧問はいじめを中心的に行っていた生徒による周囲へのきつい言動を認識し、頻繁に注意していたが、生徒は反省する態度を見せず、顧問もいじめとしての対応はしなかった。報告書では、顧問が水泳経験者ではなく、生徒にとってマネージャーのような立場であったことや他の業務で立ち会えない時間が比較的多かったことで、部員たちの行動の抑止が効かない環境になっていたために、いじめが深刻化した可能性があるとしている。

 報告書では「いじり」が「いじめ」につながる行為であることを毅然と指導し、「いじり」を用いないコミュニケーションの方法などを生徒と教職員が一緒に考えていく取り組みなどを再発防止策として提言。

 部活動がいじめの衝動を発生させやすいことを踏まえ、生徒による自主性を尊重しつつも、顧問として攻撃的な言動の予兆や否定的な人間関係の雰囲気を敏感に察知して、未然防止・早期発見・初期解決に努めるべきだとした。その一方、部活動顧問の業務負担を考えると、いじめ対応には困難さが伴うとも指摘した。

 この調査報告書について阿部文科相は5月13日の閣議後会見で「部活動を地域展開した場合にもいじめの発見、対応が適切になされることが、私どもは重要だと思っている」と話し、現在、スポーツ庁と文化庁による「地域スポーツ・文化芸術創造と部活動改革に関する実行会議」の議論も踏まえながら、地域展開後の部活動でも、生徒の安心安全の確保に努めていく考えを示した。

 

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いじめ 子どもが一定の人間関係がある他の子どもから心理的・物理的な影響を与えられ、それによって心身の苦痛を感じている状態。学校の中だけでなく、学校外やインターネット上でも起こる。2013年に学校や学校の設置者が取るべき基本的施策などを定めたいじめ防止対策推進法が施行された。

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