高校無償化を巡る自民、公明、日本維新の会の実務者協議が5月14日、国会内で開かれ、全国高等学校長協会をはじめとする、学校現場や保護者など4団体の代表からヒアリングが行われた。この中で、2026年度からの私立高校の授業料無償化に伴う就学支援金の支給方法については、いずれの団体からも、生徒本人ではなく、従来通り各学校が受け取る「代理受領」が望ましいとの意見が出された。また、外国籍の生徒を対象に加えることについて、「所得制限がない形の支援に国民の理解が得られるのだろうか」と懸念する意見も出されたといい、引き続き3党で慎重に議論を進めることになった。
ヒアリングに参加したのは、▽全国高等学校長協会の内田隆志会長▽全国高等学校PTA連合会の田名部智之会長▽日本私立中学高等学校連合会の吉田晋会長▽全国都道府県教育委員会連合会の坂本雅彦会長―― の4人。
これまでの3党協議では、26年度から私立高校の授業料も所得制限を撤廃して、45万7000円を上限に就学支援金を支給する方針を決めており、現在、具体的な制度設計に向けた協議が続けられている。
3党はこのうち無償化の対象となる範囲や、便乗値上げ対策などについて優先的に議論を進めることにしており、ヒアリングでは各団体から就学支援金の支給方法や外国籍の生徒への対応などについて、幅広く意見や要望を聴取した。
会議後にブリーフィングした自民党の柴山昌彦元文科相によると、このうち就学支援金の支給方法については、いずれの団体からも生徒本人や保護者への直接支給ではなく、学校が代理受領する形が望ましいとの意見が出されたという。支給方法を巡っては、維新から「学校への納入は授業料以外に施設整備費などもあり、他の納入金にも使えるよう直接支給する仕組みが必要」との意見が示されていたが、事務コスト面などから従来通りの方法を望む声が強かった。
また、外国籍の生徒への対応については、制度の周知をしっかり行ってほしいという意見があったほか、吉田会長から「所得制限が一切ない支援となると、例えば裕福な外国の家族を対象とすることに国民の理解が得られるだろうか」と懸念が示されたといい、引き続き慎重に議論を進めることになった。
さらに内田会長からは、入学者数が急増している広域通信制高校について、質の保証などがないままで無償化の対象としていいのかと問題提起する意見もあったという。
柴山元文科相は「急いで制度設計をしないと、現場が混乱することになる。すでに進路指導を進めている学校もあり、現場に寄り添った形で検討を加速化していきたい」と述べ、改めて今月中に一定の方向性をまとめたいとの考えを示した。
公明党の佐々木さやか参院議員は「田名部会長からは、授業料以外の学用品などを支援する高校生等奨学給付金も拡充してほしいとの意見をうかがった。大都市と地方との差などについての話もあり、そうした地方の実情も踏まえて取り組んでいきたい」と述べた。
維新の斎藤アレックス衆院議員は「公立高校の設備の老朽化について伺い、設備を更新できる支援も別立てで考える必要があると感じた。また外国籍の問題は、国籍がどうこうではなく、留学生か保護者が納税されているかも含めて、どんな制度設計ができるのか検討が必要だと思った」と話した。