外国人材が将来的に日本の人口の1割に上る時代が到来するとして、経済同友会はこのほど、外国人材との共生社会の実現に向けた提言を公表した。提言では、外国人材を単なる労働力ではなく、「共に社会を支える仲間」として位置付けることが不可欠であるとし、就労だけでなく、生活や教育の面でも支援が必要と強調。日本で暮らす外国人子女に小中学校の就学義務を課し、身に付けるべき日本語能力の水準を規定した日本語教育の学習指導要領を策定すべきだとした。
少子高齢化による生産年齢人口の減少に伴い、日本では2040年までに1100万人の労働力不足が生じるとされており、特に物流、建設、介護などのエッセンシャル領域はその傾向が顕著となっている。この労働力不足に対し外国人材の就労が進むと、2070年ごろには国内の外国人人口は全体の1割に達するという推計もある。
しかし、外国人材の増加は地域社会の中で、言語や文化などの違いから分断や摩擦が生じやすくなることが懸念される。
経済同友会はこうした課題を踏まえ、24年度に「外国人材の活躍促進プロジェクトチーム」を設置。1年かけて議論を行い、提言にまとめた。
提言では、外国人材を労働力としてではなく、共に社会を支える仲間として位置付け、共生社会の実現を目指す視点が不可欠だとし、国や自治体、民間企業が今後推進していくべき取り組みを整理した。
特に、国が優先的に取り組むべき施策の一つに教育を挙げた。日本の義務教育は、日本国民であれば保護者に子どもの就学義務を課しているが、外国籍の子どもには適用されず、外国籍の子どもが公教育を受ける機会が十分に確保されていないとして、就学義務を課すべきだとした。
また、日本語能力の不足や、母語と日本語の両方で言語習得の困難さを抱えてしまう「ダブルリミテッド」によって、学校での学習についていけず、進学や就労の機会が制約されてしまった結果、社会的・経済的な格差が固定化されてしまうことや、地域の日本語教育の支援リソースがひっ迫している課題を指摘。
国は、外国人の子どもに求められる最低限の日本語能力の水準を設定し、それに対応した日本語教育の学習指導要領を策定することや、日本語教育に携わる人材の育成、自治体への補助金支援に力を入れ、日本語教育の質と規模を拡大すべきだと提案した。
また、提言では外国人政策の実効性担保に向けて、「外国人材の活躍促進基本法」を制定し、それに基づく財源措置や、各省庁にまたがる共生政策を統括する機能を持った組織を政府内に設置することなども盛り込んでいる。
【キーワード】
日本語教育 グローバル化が進み、日本国内で生活する外国人が増えており、日本語を母語としない人への、外国語としての日本語の学習環境の充実が課題となっている。2019年に、日本語教育を受ける機会の最大限の確保や、その水準の向上などを理念とする日本語教育推進法が施行された。