教員の処遇改善などに向けた給特法改正案の参議院での審議が5月21日、始まり、与野党6人の議員の質問に対し、石破茂首相と阿部俊子文科相が答弁に立った。この中で、衆院での修正で教員の時間外在校等時間を月30時間程度に削減することなどが盛り込まれたのを受けて、野党議員が「具体的にどのような手だてを講じていくか、5年間の工程表を示す必要があるのではないか」と質したのに対し、阿部文科相は「さまざまな施策を総動員して取り組み、工程表については、法案に関連した国の制度改正や予算措置の全体像などを分かりやすく示せるよう検討したい」と述べた。
給特法改正案は、与野党5党による修正を経て今月15日に衆院を通過した。同法案では、教職調整額を4%から段階的に引き上げて10%にすることや、教育委員会に教員の業務量を適切に管理する計画の策定・公表を義務付けることに加え、修正により、2029年度までに教員の時間外在校等時間を月平均30時間程度に削減する目標を附則として明記し、その実現に向けて教員1人当たりの授業時数削減や、教職員定数の標準の改訂に取り組むことなどが盛り込まれた。
同法案の参院での審議は、21日から始まった。斎藤嘉隆議員(立民)は「修正で明記された時間外在校等時間の月30時間程度までの削減や、教員1人当たりの授業時数の削減に向けて、具体的にどのような手だてを講じていくのか、5年間の具体的な工程表を示す必要があるのではないか」と質した。
これに対して阿部文科相は「削減に向けて学校・教師が担う業務に係る3分類の徹底や、標準を大きく上回る授業時数の見直しなど、さまざまな施策を総動員して取り組む。工程表については、今後、法案に関連した国の制度改正や予算措置の全体像などについて、分かりやすく示せるよう検討したい」と述べ、理解を求めた。
金子道仁議員(維新)は、教育委員会による教員の業務量を適切に管理する計画について、「ひな型を示すということだが、いつごろどのように示すのか」と質問。
阿部文科相は「教育委員会の参考となる計画のひな形を示す予定だが、学校・教師が担う業務に係る3分類の内容など、計画に盛り込むべく事項を検討した上でひな型を作成し、可能な限り早期に示すことができるよう取り組んでいく」と答えた。
吉良よし子議員(共産)は、衆院での与野党5党による修正で、教員の勤務状況について調査を行うことが盛り込まれたことに関して、「これは勤務実態調査を継続するということか。教員の労働実態の正確な把握を続けるためには、国として勤務実態調査を継続的に行うべきではないか」と追及した。
これに対して石破首相は「現在、全国の教育委員会において、ICTの活用等により教師の在校等時間の状況を客観的に把握する取り組みが進んでいることから、今後は毎年度、教育委員会を対象とする調査を通じて把握することとしている」と述べるにとどまり、勤務実態調査の実施には踏み込まなかった。