不登校をはじめさまざまな困難を抱える生徒に向け、東京都教育委員会は5月22日の定例会で、ライフスタイルに合わせて登校時間を選択できる「新たな受入環境充実校」の設置を発表した。従来のチャレンジスクールは午前・午後・夜間の3部で構成され、4年制を基本としているのに対し、同校は単位制・全日制の普通科高校。習熟度別の少人数指導のほか、オンデマンド教材を活用し、学習成果を単位認定につなげるモデル事業も実施する。都教委では生徒の多様性に対応できる新たなタイプの学校として、教育・支援体制の充実を図るとしている。
同校は都が2024年10月に策定した「都立高校におけるチャレンジサポートプラン」をもとに、都立深沢高校(東京都世田谷区)を改編して来年4月に開設。柔軟で、きめ細かな教育課程や充実した相談体制を通して、不登校や中退経験者、日本語指導が必要な生徒、ヤングケアラーといった多様な事情や背景を持つ生徒に向け、幅広く対応することが目的だ。
設置に至った背景について、都教委の担当者は「不登校の増加に伴い、チャレンジスクールの応募倍率は依然、1倍を超える水準」と説明。その上で「チャレンジスクールの生徒のうち、修業年限を3年に短縮できる『三修制』を6割が利用している。全日制の学校生活を希望するニーズが多くあるのではないか」と分析した。
同校では単位制の仕組みを生かし、午前8時半から10時半までの登校時間の選択が可能。習熟度別のきめ細かな指導に加え、適性や進路希望などに応じて多様な選択科目を設けるとしている。
また不登校傾向の生徒に対し、校内別室指導でオンデマンド教材を使って学習し、そこでの成果を単位認定につなげるモデル事業の取り組みを実施。スクールカウンセラーを常設するなど相談体制の整備に加え、教室以外にも居場所を確保する。さらに不登校経験に配慮した入試方法として、学力検査と調査書の得点比率について「7対3」と「10対0」の2つのパターンを設定、このうち得点が高い方を採用できる仕組みも導入するという。
これらの取り組みに対し、定例会に出席した委員からは「モデル校であることを全面的に打ち出した方がいい」「在校生と、改編後に入学する新1年生のカリキュラムは異なることになるが、在校生への丁寧な説明と環境づくりが必要」などの意見が上がった。
都教委では同校の開設に向け、今年10月に募集人員などを決定。26年2月には一般入試が実施される予定だ。