参院での審議が始まった給特法改正案を巡り、教育学の研究者や現場の教員、弁護士らによる「給特法“改正”案に反対する有志」が5月23日、参院議員会館で院内集会を開き、修正が加えられて衆院を通過した法案の問題点を訴えた。有志の一人で、教員である夫を過労死で亡くした工藤祥子さん(神奈川過労死等を考える家族の会代表)は、法案に盛り込まれている主務教諭の導入に注目。主務教諭は業務過多で孤独になりやすく、過労死につながりやすいと警鐘を鳴らした。
有志らは3月7日から給特法改正案に反対する署名を始め、4月21日に文部科学省に提出した時点では4万7846筆の賛同を集めた。その後も署名を継続したところ、5月21日の時点で賛同は6万3364筆にまで増えた。
院内集会で登壇した工藤さんは「今回の法案で果たして教職員の命と健康は守られるだろうか」と問題提起した。
その上で、地域との連携や若手教員の指導など、主務教諭に求められている業務内容は、「生徒指導専任」として多くの仕事を抱えていた夫が過労死した当時の状況と酷似していると指摘した。
工藤さんは、夫が過労死した要因として、個人に多くの業務と責任が偏ることや人手不足、周囲のサポートの少なさを挙げ、「この状況は今も改善されていないのではないか。もっとひどくなっているのではないか。そして、主務教諭の職は業務過多の役職になる可能性が非常に高いと言わざるを得ない」と批判。
主務教諭を設けることで教員の分業化が進み、主務教諭は孤独に仕事を抱え込む職になり、過労死リスクが高い若手教員の指導にも手が回らなくなることに危機感を募らせ、教員の過労死や精神疾患の原因分析と対策にこそ力を入れるべきだと呼び掛けた。
【キーワード】
主務教諭 学校の組織的・機動的なマネジメント体制の構築を目的に2024年8月の中教審答申を踏まえ、教諭と主幹教諭の間に設けられる予定の新たな職・級。学校内外との連携・調整や若手教員のサポートなどを中心的に担うことなどが想定されている。