子どものうちから働く際のルールを学ぶ「ワークルール教育」の普及に向けて、日本労働弁護団は5月26日、ワークルール教育推進法案の制定を求める院内集会を参院議員会館で開いた。ワークルール教育推進法案は2016年に超党派の議連で検討されたが、法案提出には至らなかった。さまざまな労働問題がクローズアップされる中、日本労働弁護団ではワークルール教育は労働者側だけでなく使用者側にも有用であり、子どもから大人まで学べる体制を整備するためにも、法制化が必要だとしている。
ワークルール教育推進法案を巡っては、日本労働弁護団が13年にワークルール教育推進法の制定を求める意見書を発表。16年には「非正規雇用労働者の待遇改善と希望の持てる生活を支える議員連盟」で立法検討チームが立ち上がり、法案提出を目指したが、そのときは各党の足並みがそろわずに断念していた。
今年2月に開かれた同議連の総会でワークルール教育の必要性が改めて取り上げられたことから、この間もワークルール教育の出前授業などに取り組んできた日本労働弁護団では、推進法制定へ機運を高めようと院内集会を開いた。
日本労働弁護団のワークルール教育推進法プロジェクトチームで座長を務める小島周一弁護士は、こうしたワークルール教育推進法の法制化に向けた経緯を説明した上で、「この日本で真面目に働く人、真面目に経営する使用者の方々にとって健全な働く環境をつくるためにも、一つの素材を提供できればと思っている」と、院内集会の趣旨を説明した。
同議連幹事長を務める立憲民主党の石橋通宏参院議員は「残念ながら、こういった基本的な知識がないままに被害を受けている状況を変えていかないと、健全な社会労働環境をつくれない。これは経営者の皆さんにとっても必要なのだということで、経団連の皆さんにもご協力、ご理解をいただいて一緒に取り組んでいきたい」と、法制化に向けて意欲を示した。
東京大学大学院教育学研究科の本田由紀教授は、同学で全学生を対象に実施しているワークルール教育の内容を紹介。
「キャリア教育を学習指導要領や大学教育で推進することが言われているが、そうであるならば、ワークルール教育の要素を、例えば次期学習指導要領の中に明記するといったことが必要だと思う。初等中等、高等教育の全ての教育機関で、あるいは社会に出た後も働く側として、使用する側として、繰り返し確認するような形でワークルールを知っていくというのが、社会の健全な運用にとって不可欠だ」と強調した。
【キーワード】
ワークルール教育 働く上で知っておく必要がある労働に関する法令や社会保障制度、それらの活用方法について理解するための教育や啓発活動。アルバイトや就職に向けた準備を始める高校生・大学生のみならず、小学校段階から社会人まで幅広い年代でワークルール教育の実施が求められている。