不登校対策には「チーム学校」の体制強化を 自民PTが提言

不登校対策には「チーム学校」の体制強化を 自民PTが提言
阿部文科相(右から3人目)に提言を手渡す不登校対策PTのメンバー=撮影:徳住亜希
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 自民党教育・人材力強化調査会の不登校対策プロジェクトチーム(PT)の永岡桂子座長らが5月27日、文部科学省を訪れ、デジタル技術を活用しながら不登校の要因を的確に把握し、学校や関係機関が「チーム学校」として組織的な対応が行えるよう体制整備の視点を盛り込んだ、不登校への対策強化を図る提言を阿部俊子文科相に手渡した。提言では、1人1台端末を活用した「心の健康観察」の推進をはじめ、不登校の子どもや保護者を交えた要因分析、学校内外の学びの拠点整備などを提案している。

 PTがまとめた提言では、不登校は誰にでも起こり得るとした上で、その要因は複雑化・多様化していると説明。そのため学校だけでは対応困難な場合も多く、不登校によって「学業の遅れや進路選択上の不利益、社会的自立へのリスクが存在することに留意する必要がある」として、不登校対策について「ベースとなる取り組みは、国の責任の下、しっかりとした支援を行うべき」と明言した。

 これらの考えを踏まえ、PTでは大きく分けて「安心して学べる魅力的で楽しい学校づくりの推進」「チーム学校としての対応」「校内外の学びの拠点の整備・連携」の3項目で構成された取り組みを提言した。

 まずは不登校防止の観点から、全ての児童生徒が安心して学べる魅力的で楽しい学校づくりが求められるとして、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に加え、いじめの未然防止、積極的な生徒指導を総合的に進めていく必要性について指摘。取り組みを支える基盤として、教職員定数の改善や支援スタッフの配置、学校DXの推進など「学校の働き方改革」の重要性についても触れ、多様な子どもたちを包摂するため「柔軟な教育課程編成の促進に向けた検討を行うべき」と呼び掛けた。

 また1人1台の端末を活用し、児童生徒の心身の状況を把握している学校が小中ともに半数近くあるとして、この取り組みによる「心の健康観察」を全国の学校に広げる目標を掲示。ここで得られた結果を、スクールカウンセラー(SC)やスクールソーシャルワーカー(SSW)につなげる考えを示したほか、SSWやSCの全小中学校への配置支援を進めるよう促した。

 不登校の児童生徒への対応にあたっては、SCやSSWと養護教諭を含めた学校教職員で「チーム学校」を構成し、情報を共有して組織で対応することにより「真に力を発揮することが可能になる」と強調。加えて不登校の要因や背景は多岐にわたるとして、児童生徒や保護者への直接の質問を含めて要因を分析し、その上で「チーム学校」として各学校が具体的なアプローチにつなげる取り組みを提唱した。

 さらに提言では、学びの拠点の整備・連携についても明記。学習などの支援拠点である「教育支援センター」が学校内外を問わず不登校支援の中核を担うとして、学校内では全小中学校に校内教育支援センターを設置するよう各教育委員会に向け強力に推し進めるとしている。

 一方、学校外でも「不登校対策の司令塔の役割を果たさなければならない」と明記。新たにガイドラインを作成し、職員の資質能力の向上を目指すほか、特別の教育課程の編成を可能とする仕組みの新設に向け、中教審での検討を続けていくべきと強調した。

 不登校は過去最多を更新し続けており、文科省の調査によれば、23年度に小中学校を30日以上欠席した児童生徒数は34万6482人に上っている。

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