日本語におけるルビ(振り仮名)の役割を再評価しようと活動しているルビ財団は6月2日、「ルビの日」にちなんで、ルビを意識的に多用した書籍を表彰する「ルビフル大賞2025」を発表した。児童書だけでなく一般書籍も含め9冊が選ばれ、グランプリの1冊には、漢字全てにルビが振られている(総ルビ)、サッカー日本代表の三笘薫選手がドリブルの理論を解説した『サッカードリブル解剖図鑑』が輝いた。
2023年に設立された同財団では、ルビを振ることで子どもでも漢字の読み方が分かり、読書を支援できることや、日本で暮らす外国人が増加し、情報伝達の上で日本語にルビを振る重要性が増していることなどに着目し、ルビを振った書籍の普及や、簡単にルビを振れるデジタルツールの開発に取り組んでいる。
また、日本記念日協会の認定を受けて、今年から6月2日を「ルビの日」とし、それに合わせて「ルビフル大賞」を始めた。
「ルビフル大賞」には、昨年度に出版された書籍で、通常はルビが振られないような内容であるにもかかわらず、ルビが多めに振られ、著者や編集者がルビを振ることにこだわったことが感じられる書籍を対象に、9冊の書籍が受賞した。
その中からグランプリとして『サッカードリブル解剖図鑑』(エクスナレッジ)と『Newton別冊 精神科医が語る発達障害のすべて』(ニュートンプレス)が、審査員特別賞には『ロールモデルがいない君へ 6ヵ国育ちのナージャが聞くルーツが異なる12人の物語』(KADOKAWA)がそれぞれ選ばれた。
『サッカードリブル解剖図鑑』を出版したエクスナレッジの森哲也ナレッジ編集部部長は「三笘選手自身が子どもたちのヒーローになりたいという思いが強く、日本サッカーを強くしたいという志があって、技術を余すことなく解説している。当初は、ルビは振るけれど、総ルビにするのはちょっとどうかなと迷いもあった。子どもだけの本と思われてしまうのではないかという先入観があった。しかし、結果的に子どもだけでなく大人も手に取ってくれる本になり、結果的に総ルビにして良かったと思っている」と振り返った。
都内で開かれた表彰式には、評論家の宮崎哲弥さんと同財団ファウンダーの松本大さんとの対談が行われた。松本さんは、子どもが読書をする際に、読めない漢字にルビが振られていなければ、読むことができないので、知りたい気持ちを阻害してしまうと強調し「ルビが振られる社会になれば、優秀な子どもが育つし、外国の方が日本のことを分かる。あるいは、いろいろ興味のある大人が、新しい分野を学ぼうとする意味でもいいはずだ」と、ルビの利点を挙げた。
宮崎さんは、戦前は総ルビの本が多く、新聞も総ルビに近い状況だったが、終戦直後の国語政策で当用漢字を定めて漢字の使用を制限し、当用漢字にはルビを振らなくなったと指摘。「日本の国語教育を大きく転換させるには、戦前のように総ルビに近い状態に戻すことと、漢字の使用制限をなくすことが重要だ」と提言した。
「ルビフル大賞2025」に選出された書籍は次の通り。
▽知念実希人著『天久鷹央の推理カルテ ジュニア版 カッパの秘密とナゾの池』(実業之日本社)▽ネルノダイスキ著『大人も知らないみのまわりの謎大全』(ダイヤモンド社)▽三笘薫著『サッカードリブル解剖図鑑』(エクスナレッジ)▽『Newton別冊 精神科医が語る発達障害のすべて』(ニュートンプレス)▽井田仁康編著『世界のしくみが楽しくわかる 13歳からの世界地図』(幻冬舎)▽池田譲著『タコのなぞ「海の賢者」のひみつ88』(講談社)▽知念実希人著『放課後ミステリクラブ4 密室のウサギ小屋事件』(ライツ社)▽斎藤真理子著『隣の国の人々と出会う:韓国語と日本語のあいだ(シリーズ「あいだで考える」)』(創元社)▽キリーロバ・ナージャ著『ロールモデルがいない君へ 6ヵ国育ちのナージャが聞くルーツが異なる12人の物語』(KADOKAWA)