政府は6月10日、2024年度の「食育推進施策(食育白書)」を閣議決定し、公表した。生活環境の変化を背景に、国民が普段の食生活を通じて農林水産業を意識する機会が減少傾向にあるとして「食卓と農の現場の距離を縮める取組と今後の展望」を特集。生産者と児童生徒との交流など、農林水産業の体験機会の推進に向けたさまざまな取り組みを紹介している。
24年度版の特集では、農水省が同年に実施した「食育に関する意識調査」で、家族の中で田植えや野菜の収穫などの農林漁業体験に参加したことがある人がいる割合は57.0%(前年比6.2ポイント減)となり、減少傾向が見られたと指摘。一方、これらの体験参加にあたり「親子や友人など、いろいろな参加の仕方ができる」との回答割合が高かったとして、子どもたちが食材の生産から調理まで一貫して体験できる活動(山形県鶴岡市)や、農業に関する出前授業(東京都)などの取り組み事例を紹介している。
こうした取り組みを通して農林水産漁業への理解を深め、食料安全保障などの観点から、持続可能な食料システムを実現していくことが必要と強調した。
また白書では、食育を巡る学校の現状についても解説。文部科学省の学校基本調査によれば、24年度の公立小中学校での栄養教諭の配置数は6945人となり、前年に比べ21人増加。各都道府県に目を向けると、配置されている栄養教諭・学校栄養職員のうち、栄養教諭の占める割合が鹿児島県では97.6%に上るのに対し、東京都では7.6%にとどまるなど自治体間の差が目立った。
栄養教諭に関しては各教科等での指導に加え、食環境の変化に伴う栄養の偏りや食習慣の乱れ、痩せや肥満、食物アレルギーの子どもの増加にも対応。これらの個別の相談指導や知識の普及を行っていることを紹介している。
学校給食の実施状況にも言及。23年度は全国の国公私立学校のうち、小学校は99.1%(1万8584校)、中学校は91.5%(8990校)で学校給食を実施、着実に増加していると報告した。
「食育白書」は食品安全委員会をはじめ、消費者庁・こども家庭庁・文科省・厚労省・農水省・環境省など関係府省庁による食育の推進施策の状況をまとめたもの。食育基本法15条に基づき、政府は国会への提出を毎年義務付けられている。