教育イノベーションを生み出す 研究機関「BSICE」が発足

教育イノベーションを生み出す 研究機関「BSICE」が発足
LEDの接続にチャレンジする生徒たち=撮影:松井聡美
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 今年4月、東京都の文化学園大学杉並中学・高校(青井静男校長、生徒1436人)に併設する形で、教育研究機関「BSICE(Bunka Suginami Innovation Centre for Education)」が誕生した。BSICEは、学校現場そのものを研究フィールドにするのが大きな特徴。企業や公私立学校、大学、自治体などのパートナーと共に、新しい教育コンテンツの開発や教員養成、教育効果の測定などを行っていくという。BSICEのビジョンは「学校から社会の明日を照らす」。どんな試みが始まっているのか、そのねらいを取材した。

プログラミングを学ぶ体験授業を開催

 5月26日、27日に文化学園大学杉並中学・高校で行われていたのは、2026年度に同高校に新設予定の新コース「イノベーションリーダーズコース」の体験授業だった。

 この新コースのカリキュラム設計を担うのがBSICEだ。今回の体験授業はものづくり編。(株)jig.jp取締役・創業者の福野泰介氏を講師に迎え、新コースへの内部進学を希望する同中学3年生34人が参加し、同社の小さなパソコン「IchigoJam」などを使ってプログラミングを学んだ。

 初日の26日は、はんだごてやニッパーなどを使い、IchigoJamをはんだ付け。ゲームをつくるなどの体験を行った。27日には「IoT入門」として、LEDの接続をしたり、ジャンパー線を使ってペアのIchigoJamとつなぎ、実際にネットワークをつくったりした。

 福野氏は「プログラミングとは、プログラミング言語を使ったコンピューターとのコミュニケーション。実は数学よりも、国語に近い。IchigoJamはプログラム言語が100しかない、とてもシンプルなもの。プログラム言語を覚えるとコンピューターとも仲良くなれる」と話した。

 プログラミングを本格的に学ぶのは初めてという生徒がほとんどだったが、作業ごとに「面白い」という声が漏れ、夢中になって学んでいる。

 授業後、生徒からは「こんなに簡単で、こんなに面白いツールなんだと感激した」「知識も技術もマインドも学ぶことができた」「期待を超える体験授業だった。これからもプログラミングに触れていきたい」などの感想が上がっていた。

ペアとネットワークをつないでみるなど、プログラミングを楽しんだ=撮影:松井聡美
ペアとネットワークをつないでみるなど、プログラミングを楽しんだ=撮影:松井聡美

社会のリアルに焦点を当てた学びを

 BSICEは今回のプログラミングの授業のように、何らかのテーマに基づく生徒や教員向けのプログラムを共同開発する「プログラムパートナー」や、思いに賛同し、共に活動することを望む教育機関「メンバースクール」などを、6月まで募集している。

 取り組む研究の領域は3つ。①未開のコンテンツを教育現場に届け、新しい授業論を展開する「プログラム開発部門」②次世代を担う教員養成や、教員の働きがいを再構築する「教員養成・支援部門」③学術的なアセスメントを通じて社会的な価値提案を行う「教育効果測定部門」を設置し、パートナーと共に7月から本格的な研究活動を開始させる予定だ。

 こうした研究活動を通じて目指す、「これからの社会を生きる子どもたちに必要な学びの場」とは何だろうか。

 染谷昌亮センター長によれば、求められているものは2つあるという。1つは、「従来のコンテンツベースの授業ではなく、コンピテンシーベースの授業をより増やしていく」こと。「教科特有の知識・技能を活用する資質・能力そのものを、実践的に学んでいくような学びの場が必要だ」と考えている。

 もう1つは、「社会のリアルに焦点を当てた学び」だという。「社会において求められる知識・技能・価値観が変わっているのに、学校現場で習得を目指すそれらは、大きく変化することができずにいる。BSICEでは、今、本当に求められる知識・技能・価値観の習得を図る学びの場の形成を目指していく」と強調する。

 さらに「(学校と博物館などが連携した)博学連携プロジェクトをメンバースクールとともに社会実装し、企業と連携した新規教材の開発や、コミュニケーションに着目した新しい授業アセスメントに取り組んでいく。また、教員研修制度の開発や、教職志望者向けのインターン制度の運用なども推進していく」と意気込みを語った。

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